小説

□顔が見れない3ヶ月
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(ゴークリ)




「どうなんだろう、なあ」


アイツには好きな子が、いるのだろうか。
ただ不良だと思っていただけのはずだったのに最近ではそんなことを考えるようになってきてしまっている。

いけない、仕事に集中しなくちゃいけないのに。
しかも考えるのはアイツ限定で、シルバーや他の人については全くといっても無いのだから、困る。
胸を刺す痛みには知らんぷりを決め込んだまま、足元にも置いたボールを蹴りあげた。









「うーん…………」


上手くいかないな、なんてそんなこと分かりきっていた。
久々の再会にも関わらず、会わなかった期間など無いかのように普通に話し掛けてきたアイツ。
アイツ、だなんてもう呼べもしない。

名前で呼べよ、そう手首をつかんで言われてしまったから。
逃げないようにとの対策だったのだろうけど、ちょっと強く握られた手首はヒリヒリ痛んだ。
反対の手のひらで撫でると、別の意味で熱を持ち始める。

救えないな、私も。
次はいつ会えるだろうなんて、気の早すぎることを考え出しているのだから。
恥ずかしくなってその場を走って立ち去った。










「…………っ、う」


まだ心臓が五月蝿い。
もう、昨日のことだというのに。

思い出してしまったのだから仕方ない。
何だか変な感じだ、両手で抑えた頬は熱くって熱でもあるみたい。
こんな発熱、不純だわ。

うだるような暑さの中、昨日ゴールドは私がポケモンを捕獲しようと粘っていた森に現れた。
指定されたポケモンを捕獲するだけの簡単な仕事だけれど、そのポケモンがなかなか現れないから困ってしまった。

ゴールドは現れたのにと口を尖らせると、彼は悪かったなと突っつけどんに言って頬を膨らませていたっけ。
探すうちに奥へ奥へと入ってしまった私たちは、マップにも載っていない湖に出た。
もっとも、衛星写真で探せば見つけられるだろうけれど。

ともかく、そんな辺境の地で。
森に住んでいるのであろうポケモン達が水浴びをしたりしていて、幻想的で夢みたいで。
見惚れているとぱしゃん、冷たさが音と共に襲ってきた。

イタズラを成功させた小さい子のように目を輝かせて、にっと笑うゴールドの顔を見て、私、気付いたんだ。
自分の気持ちにいつまでも嘘は吐けない、ゴールドのことが、好きだ。

キラキラしている世界は眩しすぎず、温かい。
好きだと自分で認められて、とっても嬉しかったんだ。
憧れていた「好き」って気持ちを、彼に向けることができていて。

今ごろまだゴールドは寝ている頃だろうな、私の気なんて知りもしないで。
ちょっと不満だ、と思ったのもつかの間、その方が彼らしいか。
とりあえず顔を洗ってこよう、火照ったままの頬では何もできそうもなかった。












「ず、ずっと前から、好きでした!」


自分から告白することになるなんて、はたして予想できていただろうか。
その答えはすぐに出せた、NOだ。
言うつもりもなかったし、振られるだろうとも思っていたから。

言うなれば玉砕覚悟。
それでも言ってしまったのは一重に、好きで居続けるということは思っていたよりも大変だからだ。
好き、って疲れる。

特に彼は私を友達だと思っているから、近すぎる距離は毒にしかならなくて。
悪ふざけも楽しい会話も、全部全部これまでと違うから。
一人で耐え続けるのは辛すぎて、一縷の望みを託しながら。
届け伝われ、私の想い。

怖くて思わず、目をつむった。









「知ってた」


「え?」

「だから、んなこと知ってたっつーの。何だよ、俺の気持ちに気付いてたわけじゃねーの?」


「ゴールドの、気持ち?」


その日の最後に彼は、私に甘い砂糖を吐いた。


「俺なんか会った時から惚れてるよ、バーカ」













ハニワさんの曲を聞いたらそのまんまな感じの内容になってしまいました……違うんですすみませんごめんなさい。
今更(と、いうか唐突)ですけど私は「ヤキモチの答え」が一番好きです。もちた可愛い。
でも恋雪くんも好きです。

あんな可愛いものが……上手くこう、文章にできたらいいんですけどね……(遠い目)。

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