小説

□あなたに会いに行く理由
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(ヒオウギ組)



※トウメイ、キョウトウ前提


話がある、そうライブキャスターで切迫したように言われてしまえばその地に赴かないわけにもいかない。
何たって俺は兄ちゃんだし。

キョウヘイがそんなにも困っているならば、兄ちゃんである俺も協力すべきだろうから。
そんなこんなでホドモエから「そらをとぶ」でライモンに降り立つと、
ヒュウは指定されたファミレスへと足を早めた。

この時点ですでに世話を焼くことを意にも介していないのが彼のいいところでもあり、悪いところだ。
何かある度にライブキャスターで連絡をしてくるのは、そんな甘えが関係しているだろうから。


「あっ、ヒュウ兄ちゃん!こっちこっち!」


ぶんぶんと、人目を全く気にしていないらしく笑顔で手を振るのは、意外にもメイだった。
どうしてメイがここに、と刹那立ち止まりそうになるが、別に
メイもキョウヘイと同じ弟分であることに変わりはない。
正確にはメイは女の子なのだから妹分というべきかもしれないが。


「キョウヘイったらねー、もう本当にヘタレで!ちょっと自信無くしちゃってるみたいなんだ」


からからと笑うメイにじとりとした視線を、ようやっと伏せていた顔をあげてキョウヘイは向ける。
隣同士に座る二人はいつも同じような言動をとるが、今日ばかりは全然違うから新鮮だ。

力なく頭を垂らすキョウヘイに一応は大丈夫か、と尋ねておくも返答は無かった。
暫し、沈黙が場に走る。


「ううう……聞いてよヒュウ兄ちゃん!トウコさんって即断即決が基本で、格好よすぎて
俺なんか毎秒惚れ直しちゃってるんだけど、俺は優柔不断だし弱いしメイの言うようにヘタレだし格好悪いし……
トウコさんに嫌われたらどうしよう!生きていけない!」


うわあと突っ伏すキョウヘイだが、正直なところ「またか」としか思えずヒュウはため息をついた。
周期的に、年の差を気にしてのこともあるのだろう、キョウヘイは今のように少々荒ぶることがあった。
それはメイも同じなのだけれど。

最終的には「やっぱり先輩に嫌われたくなんかない!惚れ直してもらえるように頑張る!」とか何とか言い出して、
三人でどうやったら先輩に惚れ直してもらえるかない知恵を振り絞って考えることになるわけだが。

今日はそこに辿り着くまでに果たしてどのくらいだろうか。
案外というか見た目通りというか、単純なところもあるので早く終わってくれたらいいのだけれど。


「ヒュウ兄ちゃん、何か頼むー?」


「腹減ってないから別にいいや」


「二人とも聞いてよ!」


ばしん、机を叩くものだからコラ、と軽く叱ってやる。
ただでさえ長時間居座る(かもしれない)のだし、ファミレスとはいえ公共の場でしてもいい行為とはいえない。
イッシュリーグ新チャンピオンとは到底思えない振る舞いだ。

押しボタンで店員を呼び、メイはパフェをオーダーする。
端から見れば三角関係に見えなくもなさそうだ、と思ってしまいこめかみを押さえる。
あり得そうだから頭が痛くなってしまう。
何ともいえない空気が流れた。


「そりゃあまあ、若干キョウヘイは重いけどトウコ先輩だってキョウヘイのことかなり好きだし、
よっぽどのことがなければいきなり嫌われたりしないと思うけどな」


「えっ、ヒュウ兄ちゃんにトウコさん何か言ったの!?」


店員が立ち去ってから前回も言ったような台詞を吐けば、今回はそこに食い付かれた。
そんなキョウヘイの隣で、メイはそ知らぬ顔でマップを広げているので口を挟む気もないのだろう。
ここにいるのも偶然会っただけのようだ。
居るだけまだ優しい方かもしれない。

主にポケウッドやミュージカルで成功を納めた彼女は今、イッシュ中を巡り直しトウヤ先輩(とトウコ先輩)のため
Nとかいう人とダークトリニティを探しているんだとか。
チャンピオンの座を辞任したキョウヘイも探しているらしい。
PWTへ出場したり他地方からの招待を受けたりと、こちらもこちらで忙しそうではあったが。


「たまたまヤグルマの森で会った時に話しただけだけどな。
普通に会話してるだけのはずなのに、話の節々にキョウヘイが出てくるもんだから相当だろ」


「トウコさんが!?」


そういえば会ったって言ってた!とたんに目を輝かせ、だらしのない顔で幸せそうに笑うキョウヘイ。
とてつもなく嬉しそうなのでひとまず安心した。
キョウヘイは今日も変わりないようだ。

ヒュウ兄ちゃんにトウコさんは渡さないからね、っていうか森でばったりトウコさんに会うなんてズルい!
ぷーっと頬を膨らませるのは小さい頃から変わっていなくて、ちょっと笑ってしまいそうになった。

パフェが届いて、しかしながら今度はメイの機嫌が悪くなったらしく、乱暴にスプーンをクリームへと突き刺す。


「いいなあ、キョウヘイは。結局はそうやって、トウコ先輩もノロケたりするわけじゃん。
トウヤさんはそういうことしないし……私の方が、不安だよ。私ってウザくないかな。トウヤさんの重荷になって、ないかな」


悲しそうに続ける彼女だが、基本的には先ほどのキョウヘイと何ら変わらない。
しかしトウヤ先輩からメイの話をされた覚えもないし、どうしたものか。
そもそもトウヤ先輩は最近ではバトルサブウェイに通いつめるばかりらしいし会ってすらいない。
話したことも片手で足りる程度しかない。


「トウヤ先輩はそんな風に思ってないって。
昨日もライブキャスターでどうやったら上手いことエスコートできるのか話し合ったし。
まあ、俺の方が教えてもらってばっかりだけどね」


「トウヤさんが!?」


頬杖をつき、メイの手からスプーンを奪ったかと思うと勝手にパフェを食べながら、キョウヘイが呆れたように言った。
本当に呆れたいのは俺だ、心の中でこぼすヒュウの言葉は誰にも届かない。

幼馴染みの感覚からしたら普通だが、異性からスプーンを奪い食べかけを頂くというのもなかなかイレギュラーだ。
そんなが気さらさら無くとも、一般的には好意をもっているように見えてしまう。
いかんせん二人とも有名で、そうでなくとも年齢的にそろそろ一線を引かなければならないのだが。


「んで、今日も二人そろって先輩に好きだと思われてるか不安になったわけだけど、先輩を信用できないのか?」


からん、パフェの容器にスプーンが音をたてて一回転。
ぱちくり、目をしばたかせる二人に俺はしっかり言ってやった。


「相思相愛なんだから、もっと話し合って気持ちを確かめあえばいいだろ」


迷惑かと思い止まってしまう後輩の立場の二人に、エールを。
彼らは顔を輝かせた。
分かってたけど、このパフェの代金は俺が出すんだろうな、なんて、ぼんやり思った。




あなたに会いに行く理由












やたらと長い上にオチが行方不明。
でも没にしないのは私が貧乏性だからです。ごめんなさい。

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