小説

□桜の木の下で
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(シンオウ組)



満開の桜は、風が吹く度にはらはらと涙を流していた。
心地のいい、どことなく甘い匂いのする春風がゆっくりと町の空気を交ぜている。
ひらひらひら、舞い落ちる花びらがふわり、肩に乗った。
ふっと頬が緩むのを感じる。


「綺麗ですね」


「うん。今年も綺麗に咲いてくれたね〜」


麗らかな陽射しに目を細めながら、頭上のずっしりと重そうなほど花開く白っぽい桃色を見上げた。
綺麗だね、とどちらともなくまた感嘆と共に声がもれた。


「綺麗に泣いてる」


「泣いてる、って。どうしてダイヤはそんな風に言うんだよ」


「だって、せっかくこんなに花を咲かせても、わさわさ落ちていっちゃうんだよ?泣いてるみたいじゃないかな〜」


「一ミリも共感できない……」


なんでだようパール。
ゆるゆるとした二人のやりとりに思わず目元がほころぶ。
私が笑ったのを見て、二人は顔を見合わせて笑った。
しあわせな感情が繋がったようで、何だかとても嬉しい。


「詩的で素敵な考え方ですね。ダイヤモンドの言うことも分かります、」


小さな風にさえ、ふわふわと花を舞わせる。
落花の雪、空知らぬ雪とはよく言ったもので、散る姿も雅なものだ。
せっかく咲いたのに勿体ない、だから泣いているみたいと言うダイヤモンドは感性が豊かだと思った。


「ちぇ、お嬢さんもダイヤの味方かあ。俺は桜にそんなこと思わねーもんなあ」


ふて腐れ出すパールは、本当に分かりやすい。
もちろんいい意味で。
パールにはパールのいいところだっていっぱいありますよ?
彼の顔を覗き込むと彼は照れたようにはにかんだ。


「ま、みんながみんな同じ考え方なわけもないしな。
同じときもあれば違うときもある、そうじゃなきゃ、漫才も成立しないし」


「漫才ですか」


そこに着地するなど、それもかなり突飛だけれど。
そうだ、新しいネタなんだけどオイラ一生懸命ちゃんと覚えたよ〜。
胸を張るダイヤモンドに、パールは目を輝かせる。
じゃあ早速お嬢さんに見せようぜ!なんて、嬉しいことを言ってくれる。


「えへへ、お嬢様。見てくれる?」


「もちろんです!」


あなたたちの教えてくれたようにボケとツッコミというものはむつかしくて、私もまだ完全には理解できていません。
人を笑わせるというのは至難の技で、だけれどだからこそ、そんなことに挑戦することには意味があります。
努力し、実らせるというのは至高のものです。
せーの、二人は声をあわせて楽しそうに始めてくれる。


「ポケモンといえばぁ!」


「ポケモンといえば〜!」


絶え間なく落ちてくる桃色が視界の端で踊った。
これから落ちてくるものは、あなたたちの流させてくれた笑いすぎの涙かもしれないですね。
それで桜を散らせるのもまた、一興です。
ぱちぱちぱち。
笑い声は青空に吸い込まれていった。


 桜の木の下で









もう桜は散りましたね……遅れたどころの話じゃない。
しかもダイヤ中心じゃない。
そして短い。

ごめん……ほんとごめん……!
お誕生日おめでとう、ダイヤ!
のんびりしつつもしっかりしている、色々考えてる君のことが大好きだよ!

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