小説

□君を連れ出してく
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(ヒビモモ)


※アニメ二話からだいぶ経って打ち解けたっぽい頃



手を引いて走る、という行為について。
なかなか普通はとっさにしてもしないような行動だと思う。

だってあの時まだ、互いに名前も知らなかったんだよ?
それなのに手を引いて、って規格外だ。
お陰で巻き込まれた挙げ句に店にもやっぱりたどり着くのに苦労した僕の身にもなってもらいたい。


「な、何を言い出すかと思えばそんな昔のこと……!?ヒビヤくんって意外とひきずるタイプなんだね……!」


言葉通り心底驚いたのか、ぎょっとしたように一歩下がるモモを冷たくあしらう。
いちいちオーバーリアクションすぎないかな。

この人、社会に出たら本当に苦労すると思う。
それこそシンタローさんはよりも苦労しそうだ。
あの人は頭が気違いレベルにいいから大丈夫だろ、多分。
あのさあ、と僕が口を開くとモモは口をつぐんだ。


「僕が言いたいのはそういうことじゃなくて。おばさんには分かりやすく最初から端的に、結論を言ってしまえばよかった」


「だ、か、ら、おばさんって言わないでって!分かりやすくしてくれた方が助かるのも事実だけどさあ」


ぷくうと頬を子供らしく膨らませるモモ。幼稚だ。
いくつだよ、その年でそれはさすがにアウトじゃないか?
そんなことを思ったけれどまた話が反れるので言いはしなかった。


「誰にでもああいうことするのはどうかと思うよ。
初対面の人の手をとって走るなんて、こうやって僕らは再会して話せたからよかったけれど、普通ならまずもう会わないだろうし。
暴力団と繋がっている人だったらどうするつもりだったの。
誘拐だと思われたら、おばさんは何とかできたの?」


「う……な、何も言い返せないです……」


年上なのに、なんて情けないんだろうかこの人は。
心配になる。

僕の住む田舎の方が、こんな都会よりも精神的に成長できるのではないだろうかぼんやりと思った。
だってこれじゃあまるで、僕の方が保護者だ。


顔を伏せてもじもじしているモモは、上目に僕の気がはやく収まらないかとチラチラ見てくる。
魂胆が見え見えで溜め息しか出ない。
はーっと息を吐き出すとモモは顔を輝かせた。
説教が終わってそんなに嬉しいのか。ムカつくなあ。


「僕の言った意味、分かってんの?」


「……………………分かってるよ」


時間かけすぎだろ。
何よりも雄弁に分かってないと言っちゃっただろコレ。
この人はこれまでラッキーでのうのうと生きてこられたんじゃないだろうか。

兄の努力だろうか。
だとしたらシンタローさん、バカにしてごめん。
モモは真剣な表情で僕の話を聞いているが、首をかしげていた。
頭痛がする。


「そうだ!だったらさあ、ヒビヤくんがいつもいてくれたらいいんだよ!」


「はあ?何言ってんの?」


変な声が出た。
裏返ってしまい、少し恥ずかしい。

満足そうに、納得したのかモモはやけに嬉しそうに笑顔を僕に向けてくる。
さすが騒がれるだけあるアイドルの笑顔はそれなりのもので、ヒヨリに陶酔しているはずなのに
気の迷いをおこした心臓が強く鳴った。


「ヒビヤくんしっかりしてるし、そうだよ!ヒビヤくん、私の面倒見て?」


「ヤだよそんなの!バッカじゃないの!」


「ええーっ。そんなこと言わずにさあ、ちょっとはちゃんと考えてよヒビヤくん!」


こんな話をするつもりじゃなかったんだけど。
全く自分で自分を律するつもりのないモモの顔を見て、そうして僕は少しだけ諦める。
言ったって無駄だろうとは思っていたけど、ここまでとは。

僕の機嫌をとろうとする必死なモモに、このままなし崩し的にお守りを毎日してみてあげるのもいいかもしれないと思った。
その方が結局は常識を教えるのにも手っ取り早いしね。


「しょうがないなあ、もう」


だからモモと一緒にいられる時間が増えて嬉しいなんて、気のせいなんだ。絶対にね。


 君を連れ出してく

 (信じるよ、君だから)








これまたうだうだぐだぐだ……意味が分からないですね。
アニメ見てテンションが上がりすぎた結果の産物。

しっかりしてるヒビヤを(無自覚で)振り回すモモの関係が可愛いと思います。
って話が書きたかったんだけど、なあ……。

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