小説

□パーティー後の憂鬱
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(ゴークリ)


どこの地方だって初心者に手渡されるポケモンは三匹だ。
カントーならフシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメ。
ジョウトならチコリータ、ヒノアラシ、ワニノコ。

同じように、どこの地方でも図鑑所有者は決まって三人だ。
カントーはレッド先輩、グリーン先輩、ブルー先輩。
イエロー先輩もいるけれど、イエロー先輩は特例みたいなものなのでここでは申し訳ないけれどカウントはしない。
ジョウトは私と、ゴールドと、シルバー。

いつだって何だって、決まって私のそばにその数字は付いて回る。
これは完全にこじつけなのだけれど、手持ちに入れることのできるポケモンも六匹で、三の倍数。
そうだ、それにね。
明日からはもう五月。


「一年の三分の一が過ぎちゃった」


ぴったり、私の誕生日に、ね。
誰に言うわけでもなく呟いた言葉は宙を場違いのように漂う。
浮いた言葉に一抹の気恥ずかしさを感じたけれど、どうしようもなくて窓にもたれかかった。

数日前まで春の嵐と形容するしかないような雨風の強いの日が続いたせいか、空は雲ひとつない。
綺麗なものだ、月明かりが眩しいくらい。
ぼんやりと夜風にあたりながら空を眺めていると、唐突にポケギアが鳴り出すのだからびっくりした。
呼び出し音は静寂を裂くようで、心臓をばくばくいわせながら音源を手中におさめる。


「はい、クリスタルです」


「よおクリス。元気か?」


名乗りもせずいつものように軽い調子で聞こえてきた声に、意図せず眉間にしわが寄る。
いつものことだけど、名前くらい言ってくれたっていいじゃない。ねえ?
そりゃあ、ディスプレイには名前が表示されているのだろうけれど、それとこれとは別というか。
ごちゃごちゃしだす思考に自分勝手にイライラしてしまいながら、しかしこれだけは指摘させてほしい。


「元気かって、さっきまで一緒にいたのよ?そんなにすぐ元気がなくなったりしませんっ」


「はは、それもそうだな。クリスだし」


む、それもそれでちょっとどうかと思うけれども。
女の子に向かって、失礼じゃない。


「で、どうかしたの?改めてお誕生日おめでとう、なんて言ってくれるわけでもないだろうし、何かあった?」


「さすがクリス!そういうことよく分かんな」


からからと笑うばかりでなかなか本題に入ってくれない。
切羽詰まったような、生死の境をさ迷う危機があったわけではないようだから安心したけれど、
そんな危険な状況下に常日頃から身を置くことなんてないだろうけれど、こっちの身にもなってほしい。
今は特に何もしていなかったからいいが、もう時計の針は両腕を上げている。
良識的に考えて、普通なら通話ははばかられる。


「大したことじゃねーんだけどさ、ちっとばかし心配になったんだよ」


私をゴールドが、心配。
え、また明日は嵐が来るのだろうか。
柄じゃねぇことは分かってるけどよう、いいだろ心配くらいしたって!つうか心配くらいさせろよ。
何故かゴールドは憤慨しだすから、モヤモヤした言葉にしづらい感情はなりを潜めてしまった。
全くもう、しょうがないわね、なんてお姉さんぶった台詞が口から飛び出す。


「でも驚いたわ。ゴールドも案外、優しいところがあるのね」


「んだよそれ。人がせっかく、独りぼっちの静けさに寂しさを感じてねえか気を揉んでやったのによう」


「さびし、さ?」


誕生日パーティーを開いてもらえたことは、とても嬉しかったんだ。
一日中、ずっと誰もが私に笑いかけてくれて、おめでとうと言ってくれて。
今日はじめて一人になって、ぼんやりと外を見てしまうのは、そうか、寂しさだったんだ。

名付けられた思いに熱が灯る。
寂しい。
私は、寂しいよ。

だって仕方のないことなのだけれど、人恋しくなってしまう。
ありがとう。礼を言う声が震えた。
情けないなあ、涙もろくなってるのかな。
目の前が水滴でにじんだ。


「ありがとう。そうだね、私、寂しいや。自分でも気付かなかったけど、寂しかったんだ」


「その礼は気付いたことに対してか?ったりめーよ、気付くに決まってんだろ。クリスの考えることくらい」


「もう。なにそれ」


ちょっと元気が出てきたのも事実だけど。
少し笑うと、心が軽くなった。
ありがとう、今度は口に出さず胸の中につぶやく。


「んじゃ、今日くらい早く寝とけよ」


「うん。おやすみ」


用は終わった、とばかりに声をかけられ、名残惜しいながらにゴールドへありきたりな言葉を向けた。


「…………?」


あれ。
返事も反って来ず、なかなか通話は途切れない。
言い残したことでもあったのかと耳をすませた。


「…………寂しい、なんて。クリスは一人じゃねーんだからそんなことばっか考えんな」


「え?」


「俺がいるだろ!それにポケモンも、シルバーも。じゃあな、おやすみっ!」


ぽかんとあっけにとられた。
照れたように告げられたちょっぴりクサイ台詞は、しかしながら彼らしくて。
ツーツー音を鳴らすポケギアを切るのもしばし忘れて、何だか私は胸がいっぱいで、苦しいよ。
そんなことを言ってくれるのは、小説なんかだとよくある展開ではあるものの、彼が言ってくれたのだから。


「嬉しっ……」


きゅんとしちゃった心の音が弾んでキラキラ輝いた。
これだけで世界が明るく見えちゃう私も、大概分かりやすいね。




 パーティー後の憂鬱

 (賑やかな楽しい一時の後の静寂ほど孤独を感じるものはない)














タイトルのセンスの無さがヤバい。三分の一、という言葉を使いたかっただけ。
本当はシルバーをもっと出したかったけれど一応ゴークリ書くことにしてたから自重しました……。
もっと分かりやすくいちゃいちゃ(死語)してる話を書けたらなあと思うんですが思い付かない……。

しかもこの話、どっかで書いたことありそうな内容ですね。
こんな話ばっかですみません……。

遅れたけど、クリスお誕生日おめでとう!
いつもいつも情緒不安定みたいに書いちゃってごめんね!
生真面目で恥ずかしがりなクリスが大好きだよっ!

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