TOY
□テトラポッドと宇宙ごみ
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ざざーん、ざざーん。
押しては引いていく波に興味津々だった彼女だけれど、もう疲れてしまったようだ。
うまい具合に件のテトラポッドに足をのせ、眼下の海を見ながら足をブラブラさせていた。
「どっすか、念願の海は」
「…………あんまり綺麗じゃないんだね」
そりゃあ、あんな透き通った青い海なんてそう見られるものじゃない。
苦笑すると、でも来てくれてよかったってちゃんと思ってるもん!と彼女はむきになったように声を上げた。
そんなの数十分前の喜びようで十二分にも分かるのに。
「でも、何でだろ。とっても綺麗だね」
「そっすか?」
横から覗き込んだ彼女の瞳の中には白色の雲と青い空と、青い海しか映っていない。
ひらひらと強い潮風にフードとスカートがあおられる。
「そうだよ。汚いけど、綺麗。きっとあの汚いごみだって、お星さまから降ってきたごみなんだよ。だからキラキラ光って、こんなに綺麗」
真面目な顔をして可愛らしいことを言う。
笑うと、目敏く俺の表情を見つけた彼女は冗談で言ったんじゃないんだけど、とくちびるをとがらせた。
「本当にありがとう、セト。海に連れてきてくれて」
私ね、絶対一生見られないと思ってた。
風になびく髪を押さえながら言うものだから、今だけは不可能は飲み込んでしまおう。
そうやってから無理だと知っていても、彼女のために言いたかった言葉に音をのせる。
「いいんすよ、お礼なんて。俺はマリーが行きたいと思う場所だったら、どこにだって連れていけるんすから」
「えへへ。ありがとう」
はにかむ彼女が本当に行きたいのはきっと、母や父のいる場所なのだろうけど。
それを言わない彼女はとても優しい。
ざぶん、ざぶんと寄せては返す波の音を、彼女は長いこと聞いて、海と空との境界線を眺めていた。
ずっとずっと、一日中。
テトラポッドと宇宙ごみ
短く終わらせたいのにズルズル引きずって長くしてしまう。
何故。
もっと短く素敵な文が書けたらなと……思います……。
とてもテトラポッドが好きです。
可愛いなと思います。発音も形も。
重さだけ唯一可愛くないですが、重くないと防波堤を保護できないですね……。