TOY
□永遠の絆
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(ダイヤ)
オイラの最初の誕生日プレゼントは、すっごく特別なものなんだ。
お母さんのくれたプレゼントを、オイラはずっと離さないで持ってきた。
ご飯の時も、お風呂の時も、旅した時も、帰った時も、これまでも、これからも。
持っていればきっといいことがあるから、それまで信じて持っていて。
お母さんの魔法の言葉にオイラはこくこくうなずいて、お母さんの言ったことを守っていたんだ。
今ではもう仲良しだけれど、最初にあったときオイラもパールも人見知りをしちゃっていて、互いに話すことができないでいた。
状況を打破してくれたのは、オイラの大事なプレゼント。
「それ、なに?」
小さいパールは不思議そうに首をかしげて指をさす。
オイラはちょっぴり誇らしくって、胸を張って答えた。
「ダイヤモンドだよ」
「名前じゃなくてそれの名前が聞きたいんだけど!」
「だからこれ、ダイヤモンドなんだよ」
首から下げた小さな欠片、小さな透明はきらきらとても綺麗で、よく見えるようにとパールの手にのせてあげると、パールはすげえと呟いて目をキラキラさせた。
オイラの、オイラだけのプレゼント。
やっぱりこれは特別なんだ。
嬉しくなって話を続けたのがきっかけで、パールとはとっても仲良くなれたんだ。
パールと友達になれたのは最大級のいいことだから。
るーの背中でのんびり日向ぼっこをしながら、お昼寝でもしちゃおうかなと思っていたときだった。
おうい、なんてオイラを呼ぶ声が聞こえて体を起こすと、お嬢様とパールの姿があった。
一緒に旅をしていたころと同じような格好をしたお嬢様がフタバタウンにいることに驚いて、思わず声をあげる。
「お嬢様!?急にどうしたの?」
「え、ええと、その、私は」
理由を聞いてはいけなかったのだろうか、彼女はうつむいて、おろおろと言葉を並べる。
お嬢様の隣に立つパールは楽しそうにお嬢様を見ていた。
「言っちゃえよお嬢さん。言わなきゃ分からないだろ?」
「わ、私……時間ができたので、二人に会いたくて……来、ました」
結びの言葉は消えそうなほど小さい。
恥ずかしいのかもじもじと手を重ね合わせる様子は可愛らしくて微笑ましい。
オイラもお嬢様に会いたかったから嬉しいな、と言うとお嬢様は照れたように真っ赤なままではにかんだ。
オイラの部屋に招いて、マフィンと紅茶を囲んで三人で他愛もない話をする。
久しぶりに話すから最初は少しぎこちなかったけれど、進むにつれて流暢に変化した。
楽しくって笑顔で溢れる会話は幸せで、嬉しい。
一通り話をし終えて、そろって冷めてしまった紅茶を飲む。
何だか笑えてきてしまって顔を見合わせて笑うと、そうだと唐突にパールが切り出した。
「そういえばダイヤ、お嬢さんにそれ、見せたか?」
「それ?」
突然の指事語に首をかしげるお嬢様。
そりゃそうだ、オイラでさえ急すぎて一瞬何のことか分からなかった。
思い当たるものは首から下げるこれで、服の上から軽く握って、そういえば見せていなかったなと思う。
別に見せなきゃいけないものでもないし、でもお嬢様にだけ内緒ってのも、何だか嫌だ。
「何ですか?」
「オイラの誕生プレゼントなんだ。お母さんが最初にくれた、オイラへのプレゼント」
「ダイヤモンド、ですか」
さすがお嬢様、見ただけで分かるらしい。
彼女の手に渡すとお嬢様は少し宙に持ち上げて再度眺めた。
「綺麗ですね。誕生と同時に名前と同じ石を贈るお母様も、素敵だと思います」
「へへへ。ありがとう」
お母さんを褒められるのはびっくりだけど、やっぱり嬉しい。
頭を掻くとお嬢様はオイラに石を返してくれて、けれど何か思うことがあるようで目を伏せた。
何かしてしまっただろうか、心配で思わず彼女を注視した。
「……どうしてダイヤモンドは、私にもこれを見せてくれたんですか?」
誰にでも見せる訳じゃないんでしょう、と付け足されて、悲しそうなお嬢様の横顔に胸が痛くなる。
けれど深い意味なんてないよ?
ただ、オイラは。
「お嬢様はオイラの友達だもん。お嬢様に隠し事、したくなかったんだ」
こんな理由なんだけで、いいかな。
きっとオイラのまゆげは下がってしまっていることだろう。
お嬢様を見ると、彼女は驚いたようだったけれどそのくちもとに美しい弧を描いた。
「私も、あなたたち二人には何も隠し事はしたくないです」
少し彼女の声は震えていて、目にも涙の幕が張っていた。
どうしてだろう、と思う程に心情を理解できないわけでもない。
お嬢様の想いが嬉しくて、オイラまでつられて泣きそうになってしまった。
「ちょ、何だってんだよ二人とも!俺だって隠し事なんかしないからな!」
パールの焦ったような声が乱入する。
首にかかったオイラと同じ名前の石が、紅茶に映って光って見えた。
お母さん、ありがとう。
ダイヤモンドはオイラたちに、永遠の絆をくれたよ。
ありがとう。
永遠の絆
リベンジでした。
書いた人の底の浅さがありありと見えるような話になってしまったけれど、一応これでも頑張った。
お粗末様ですすみません……