TOY

□それでも傍に居てほしいと泣き笑い
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(コルニとルカリオ)


あたしたちは生まれた時からずーっと一緒。
お互いのことは誰よりも分かっていて、あたしたちは親友でライバルで兄弟で。
だけど、それでも結局あたしたちは、赤の他人なんだ。


「ルカリオのばか!何で分かってくんないの!?」


初めてそう実感させられたのは青々とした葉が日の光を返してぴかぴか光る初夏の候だったと思う。
まだ自分本意でわがままな幼いあたしは、ルカリオなら理解しているはずなのに考えに賛同してくれないから、つい、勢いで叫んだ。
口論の内容は実に幼稚なもので、帰りのルートをどう行くかが論題だったと思う。
そんなどうでもいいことに熱くなって、言ってはいけないことを言ってしまったと気付いて慌てて口をつぐんだ時には、ルカリオは悲しそうな目で笑っていた。
どうしてまだあたしに笑いかけてくれるのか分からなくて、しばらく無言を貫いた後に口に出した、ごめん。
収束したもののこのことはトゲのようにあたしの心にずっとずっと刺さったままだった。


「ルカリオ……」


思い出したのはルカリオがメガシンカをして、波動によってあたしの声が聞こえなくなったからだった。
これまでどれだけルカリオがあたしの言うことに従ってくれていたのかがよく分かる。痛いほどに分かる。
どんなことを言ったって、やったって、言うことを聞いてくれた。
いつだってあたしの味方でいてくれた。
それなのにあたしは、光の消えたルカリオの瞳にあたしが映っていないのを目の当たりにして。
怖い、と思ってしまったんだ。


「……あ、」


寝付けるはずもない時は開けた場所で月を見るのがあたしのくせ。
それを分かっているよ、と言うように少し笑いながらルカリオはあたしの肩に手を置く。
何を言っているかは分からないけれど、このままここにいると冷えるよ、と心配そうにジェスチャーで示してくれた。
あたしはさっきのあんたを信じてやれなかったんだよ。
そんなに優しいと、あたしは、どうしていいのか分からない。
まだまだ未熟なままだ。全然、まだまだ。


「ごめんね、ルカリオ」


言いながら頭を撫でると、ルカリオは耳をへにょんと下に曲げて嬉しそうに笑う。
けれど言葉を理解したようで、何が?と言うように首をかしげるしぐさが、どうしようもなくいとおしく思えて手を回して抱きついた。


「あたし、あたしは、いつまでたってもあんたのために何もできない。
ルカリオはあたしのために色んなことをしてくれるのに、こんなんじゃ……トレーナー、失格だ」


声が震えた。情けない、きっと泣きそうなこの気持ちだってルカリオは分かってしまって困ってる。
顔を見せないままにぎゅっと抱き締める力を強くすると、ためらいがちにルカリオの手があたしの背中をトントン小さく、ゆっくり叩いた。
優しさが染み入るようで、あったかい。


「でももう、あんたのいない日なんて考えられないんだ。ごめん、ごめんね、ルカリオ。
こんな主人で、ダメなのに手放すこともしないで、自由にしてやれなくてごめんね」


そっと体をはがされた。離れられたのが少し寂しくて、涙の膜が張ったままの目でルカリオを見る。
ルカリオは悲しくて優しい目をしていて、あたしの目尻に浮かぶ涙をそっとぬぐってくれた。
ぶるぶると、何かを伝えるように身振り手振りを交えて言ってくれるけれど、全然分からないや。
でもね、あんたがあたしを慰めようとしてくれることだけは分かるよ。
必死なくらいのルカリオの様子は、見ていたらひどいんだけど笑えてきちゃって、こらえきれずに声を出して笑うとルカリオも困ったように笑った。


「ありがと、ルカリオ」


繋いだ手はとても温かくて優しくて、リオルの時のまんまのそれに懐かしくなる。
あんたはいつも、変わらずにあたしの側にいてくれるんだ。
当たり前のように思っていたことを改めて噛み締めらた。湿り気を帯びた風が吹いて、乾いた涙の後を通る。
もう一度名前を呼ぶと、ルカリオはあたしの気持ちを分かっていると言うかのように優しく一声鳴いた。
月明かりの下に落ちた声は、これまで聞いたことがないくらいの優しさに、満ちている。


 それでも傍に居てほしいと泣き笑い

















様よりお題をお借りしました。
ずっとこのお題で何か書きたいなと思っていたのでお借りできて嬉しい。

ルカコルすごい応援してます。ルカコルいいよね、ルカコル!
ルカリオはコルニのことをとても大切に思っているのにコルニはあんまり意識してない、あの微妙な関係性がとても好き。
運動神経がいいからルカリオに任せればいいことも自分でしちゃうコルニにひやひやするルカリオが可愛い。

ルカスモも好きなんだけど、どちらにせよ書(描)いてる人が少なくて悲しい。

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