TOY

□不意打ち
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僕は幸せだけど、嬉しいけど、レッドさんが動かないのはやっぱり不安で。
本当にこのまま時間が止まってしまったの?
それはそれで嫌だなんて、僕は自分勝手すぎるけれど。
おそるおそる首をすくめて顔をほんの少し、あげた。
上目遣いに見たレッドさんと目があって、心臓がばくばくと自己主張。
にこりと彼が笑うものだから、ああもう、これ以上は心臓に不可がかかりすぎてしまう!
きっと顔も真っ赤で、見られたものじゃないだろう。
オロオロと視線を泳がせる。
何やってるのと、ため息をつくようなジェスチャーをしてみせるチュチュとピカがいて、そんなこと言われたって、と萎縮してしまった。
僕はこれで十二分に幸せだけど、どうやら世間はこれ以上を推奨しているらしい。


「やっぱ嫌がるかもしれないし、ここはいっそ、一気に勝手にやるべきだよな。たぶん」


「へ?」


不意に頭上に降ったのは、全く予想していなかった言葉の並びで。
パッと顔をあげると、彼はいたずらっ子のように笑っていった。


「えいっ、」


「え、ええっ!?」


一陣の風が駆けて、彼の手の中に、気づけば僕の麦わら帽子は移動していた。
ふわり、結った髪が重力にしたがって落ちる。
彼の前でこの長い髪を見せるのは何度目だろうか。
片手ほどしかないからか、まだ慣れなくて照れる。
彼の瞳に映った僕は、分かりやすく視線をさ迷わせしどろもどろ。


「急にごめんな。イエローの長い髪、久々に見たくなって」


「そ、そうなんですか……」


うつむくと同時に髪も揺れるから羞恥から逃げられない。
でも何で急に髪なんか。
不思議に思ってほんの少し顔をあげると、レッドさんは僕の視線には気付かないようで麦わら帽子に目を向けながら続ける。


「綺麗なんだから帽子かぶらなくたっていいのに。……俺が言えたもんじゃないけどな」


からからと笑って彼は、自分の帽子をとった。
ひょんひょん跳ねている髪が露になる。
僕が未だにレッドさんの方を見ることができないのに、彼は笑って、ごめんなと謝罪の言葉を口にした。


「嫌だよな、ごめん。もうやらないからそんな顔するなよ。な?」


帽子をすっぽり被されて、ぽんぽん軽く頭を叩かれた。
これじゃあポニーテイルは隠せていなくて、本当にただ帽子を被っただけ。
レッドさんは僕の顔を覗き込んで、罰が悪いようにしているのが、何だかおかしかった。
レッドさんは何でもできて、僕のことなんか全然、気にしなくたっていいのに。
ゆっくり二人で、ずっと立ち止まって話をしていたけれど歩き出す。
人目もまばらな裏通りは静かで、ふわりと葉を踊らせながら風が通り抜けた。


「…………たまになら、いいですよ」


沈黙の後に恥ずかしいけれど、もごもごと口を動かせばレッドさんはパッと僕を見る。
当然、彼の方なんて見られなくてきっと赤くなってしまっているだろう耳を、ぎゅっと麦わら帽子をひっぱって隠す。
彼が見たいというならば、彼にならば、見せてもいいかなと思う。
どきどきと高鳴る心臓が痛い。
現実逃避として前方に目を向けると、仲睦まじげに歩くピカとチュチュが、とても可愛い。


「でもその代わり、レッドさん以外の人がいる前では勘弁してもらえませんか?」


民家の窓に映る自分の、ポニーテイルが気になって仕方ない。
言い訳がましく言うと、レッドさんも気づいたように窓に視線を向けた。
そうしてからぽん、と優しくまた僕の頭に触れる。


「ありがとう」


「い、いえっ」


眩しいくらいの笑顔は太陽みたいに暖かい。
そうだ、どうせなら俺の家に来るか?なんて誘われて、嬉しくって息が詰まる。
行ったことがないわけではないけど、でもやっぱり僕は幸せで。
レッドさんのこと、やっぱり大好きだ。


「……っていうかイエロー、麦わら帽子そのままでいいのか?」


「え?あ……うわあ!」


垂れたままのポニーテイルを慌てて仕舞う。
彼は楽しそうに、勿体無いから言わなきゃよかったと惜しい口ぶりで告げる。
僕が彼の唐突な声に、言葉に、動きに、慣れることはきっとないんだろうなと思った。
だっていつもこんなに緊張しちゃって、彼を前にしたら他のことなんて全然、思い出せないのだから。











不意討ちというか何というか、何なのだろうこれは。
うわあ書き直したい……ごめんイエロー……いや、レッドもだけれど。
意味不明ですが雰囲気で読んでもらえたらなと思いますすみません
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