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□ラブアフェアー・ラプソディー
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草木も眠る丑三つ時、とまではさすがにいえないものの、相当早く。
オレがまだ寝てるってのに、あの非常識なイチャつきコンビはやってきた。
ピンポンピンポン、インターホンをウザいくらいにならしてきたから、眠い目をこすりながら玄関に向かう。
急ぎの用っぽかったから、ブーツとか何も履かずに……悪かったな、ちっちゃくて!(誰も何も言ってない)
「お早うエメラルド!よく眠れたかい?」
「……こんな時間に何の用だよ、ルビー」
外はまだ薄暗いのに、何故か清々しい笑顔を普通に向けられたのでイラッとした。
オレは寝てたかったんだよ、安眠を妨げるな!
「ルビーだけじゃなかっ!私もいるったい!」
ひょこっ、とルビーの背後から顔を覗かせるサファイア。
今、屋根から飛び降りてルビーの背後に回った気がしたけど、気のせいだよな?
そうだよな、そんな忍者みたいなことしてないよな……うん。
見なかったことにしよう。
「きっと僕らが言うのが、今日は初めてだろう」
「誰よりも早く言いたかったけん、その方が私は嬉しか!」
にこにこ笑いながら、オレを見て。
思い当たることが、全くもってないわけじゃないんだ、だってオレも。
期待したって、いいじゃないか。
「「お誕生日おめでとう!」」
綺麗なコーラスで言われた。
嬉しいけど、ちょっとゲンナリする。
「人の誕生日でいちゃつくな!」
「そんなこと言わんでほしか!あたしたち、エメラルドに喜んでほしくて、誕生日プレゼント、必死に探したと」
「でも、なかなか見つからなくてね……そこで、僕らはまず根本的なことから考えてみることにしたんだ」
オレのツッコミを無視してサファイアの言葉を次ぐルビー。
ああ、完全に目が冴えた。
二度寝する気満々だったのに……どうしてくれるんだよバカ。
「根本的なことって?」
「エメラルドが好きなものは何だろう、って考えたったい!」
「は?」
オレの、好きなもの?
確かに、誕生日プレゼントで相手を喜ばせようと思ったら、
相手の好みにあったものを渡すのが無難だろう。
あえて嫌いなものを贈るのも、意味が分からないし。
だから根本的なこと、というのは言い得て妙かもしれないが。
「エメラルドの好きなものち言えばー!」
「ポケモンバトル!……だよね?」
ぎらっ、と2人の目が一気に輝く。
はっ!?お前らとやったってボコボコにされる気しかしないっつーの!
第一、まだオレの手持ちたちは夢の中だろうし。
「サファイア、他にエメラルドが好きなものといえば、何があると思う?」
「決まってるったい!」
口角が上がってる、完全にイタズラっ子の顔だ。
と、いうことはまさか……!?
「「クリスタル先輩!!」」
「おっ……お前ら、ちょっと黙ってろーっ!」
ああもう、何なんだよ!
オレの苦痛の叫びは、曇天の空に吸い込まれた。