文章
□張り合いバースデイ
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「あったか?」
「何とか。イエローにも手伝ってもらって、やっと見つけたんだぜ!……グリーンは?」
「探しだした。当然だろう?」
息を切らした様子で、だけれども腕一杯に小さな花束をたくさん抱えている。
ブーケを嬉しそうに見つめ、しかし表情はあまり変えずに、小さく呟くグリーン。
「お誕生日おめでとう、ブルー」
「そーゆーことは、本人に言えっての」
そうだな、と言う彼の表情は、どんな時よりも穏やかだったと後のレッドは語る。
***
今日は私の誕生日!
それ以外だと、実は写真の日だったり氷の日だったりする。
けど、そんなことよりも気になるのは、
レッドのピカから届けられた“招待状”の内容である。
もちろんそれは、私の誕生日会だろう。
『来る6月1日、午後6時、トキワジム前にて待つべし。』
何故に果たし状風なのかツッコミたい。
しかもわざわざ毛筆で書いちゃう凝りようだ。
達筆ながらに個性的なこの招待状は、字体的にレッドが書いたものだろう。
「ジムで誕生日会をするのかしら?でも、いつもはグリーンってば融通きかないのに」
ただ、待ち合わせに指定しただけだろうか?
待つ身としては、こんな長時間「待て」と言われても辛いだけなんだけど、
女心が分からないのは今に始まったことじゃないから何も言えまい。
女心っていうか一般的な配慮としてそういうことを考えてほしい。
「って、勝手なことばっかり言ってるなあ、私」
長時間待たなければならないといっても、実は予定が入っているし。
午前は家族で映画を見に行くし、午後はシルバー達と会う約束をしてるから。
「でも、お楽しみは最後に取っておいた方が、断然いいわよね」
別に前者が楽しみじゃないわけじゃないわ、言葉のアヤよ?
お父さんとも一緒に見るから、全米が泣いた系の泣ける映画を見ようかしら。
幸せすぎて、ちょっとこわいくらいだわ!
招待状をバッグにくしゃくしゃにならないように仕舞って、シルバーのくれた帽子をかぶる。
「さあさあ、今日は私の祝福日だ!」
階段を滑るように駆け下りた。