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□新人2人、捜索中
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!)カゲロウ3巻直後設定。
平然とネタバレ/4巻については考えない/モモ視点、です。
お兄ちゃんにとっての“アイツ”はあの人で、エネちゃんにとっての“アイツ”はあの人で。
団長さんにとっての“アイツ”はあの人で、だったら私にとっての“アイツ”は誰なのだろう。
そんなことを、よく考えていたんだ。
死にかけた彼に再会したのは偶然で。
だけれど彼の目を一目見てしまえば偶然とも言えないのかもしれない、と思えてしまう。
目を『凝らす』能力。
私が考えたかったけれど。
予想以上に彼―――ヒビヤくんは名付けるのが上手くて、定着してしまった呼び名。
話は少し変わるけれど。
いきなり『おばさん』呼ばわりされたり。
私がアイドルだとは知らない人は、団長さんといいヒビヤくんといい、意外と多いのかもしれない。
騒いでいるのも、一部の人だけなのかも。
楽観的に考えて、だけれどそれだと連日の登下校の私の苦労が説明できない。
考えを打ち消すと、少し悲しくなってため息が出た。
アイドルだなんて、知られてない方が嬉しいけれどやっぱり『おばさん』は嫌だなあ。
ならば団長さんはともかくとしてヒビヤくん、単に世間知らずなんだろう。
田舎から来た、みたいなことも言っていたし……
自慢じゃないが世間をかなり騒がせている私だ、どれだけ田舎から来たのだろう。
よく分からない方向性に流れ出す思考を一時停止させ、隣に座るヒビヤくんに視線を向けた。
「ん。何、おばさん」
「だから、おばさんって呼ばないの!ね?」
「そうだった、ごめんごめん。何、モモ」
露骨に投げやりな風に言われたが、気にしないことにしよう。
私の仕事が立て込んでしまって、ヒヨリちゃんを一緒に見つけよう!と言い切ったくせに捜せなくて。
おかげで私は休日返上で小学生とバスでちょこっと遠出。
ヒビヤくんは不機嫌そうだ、そりゃ当たり前だろうけれど。
私が色々やってる間、ヒビヤくんとヒヨリちゃんの捜索をしたのは
コノハさんとお兄ちゃんらしい。
団長さんやカノさんたちも色々することがあったらしい。
お墓参りしに行くとか、そんなようなことを言っていた。
ヒビヤくんとコノハさんが不仲なのは周知の事実だし、
ヒキニートだったお兄ちゃんが長時間炎天下にいるなんて不可能だ。
エネちゃんはエネちゃんでコノハさんを嫌ってるし。
……こうして考えると、すごい嫌われようだなコノハさん。
ともかく、ヒヨリちゃん捜索もままならないパーティだったわけだから。
ヒヨリちゃんは危険な状態にいるかもしれない、のに。
ヒビヤくんが焦るのも無理ないと思う、思わざるをえない。