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□シャイガールからプレゼント
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そんなこんなで、現在に至るわけだが。
プレゼントを選びのため、山へ街へ繰り出したりしたのだが、いつもイマイチで。
嫌がらせのように頭をよぎる、エメラルドの言葉。
もうお手上げったい、あたしが悪かったち、許してほしか!
誰に言えばいいのやら分からなくて、頭を抱えるしかなかった。
「ルビー、お誕生日おめでとう、ったい!」
結局思い付かなくて、寝不足のまま勢いだけでいつものように勝手知ったる他人の家、ルビーの家に上がり込む。
自分でも予想外だ、12時ぴったりに“おめでとう”と私が祝うなんて。
自慢じゃないが遅くまで起きているのは、なかなかどうして苦手だったりする。
「君はまた窓から入ってきて……まあいいや。ありがとね、サファイア」
「はいっ!プレゼント、あんたのために選んだんよ?開けて!」
「ありがとー」
深い紅色の包装紙を、宝石みたいな紅の瞳に映して開けるルビー。
何だかそれが神秘的ながらに子供っぽくて、少し笑ってしまった。
「…………サファイア、これは?」
「えっと、“肩たたき券”ったい」
「肩たたき券!?
ちょっとサファイア、僕は誕生日プレゼントに、ずっと好きな人から、本当に肩たたき券をもらったのかな!?」
大声でまくしたてられて、耳がキーンと遠くで鳴った。
なんね、あたしの肩をつかんで揺さぶるから、うまく考えられないいいい……。
そんなに喜んでもらえるなら本望だ。
いつも、裁縫やらなんやらした後は肩が凝ると言っていたから考えた、苦心のプレゼントだったのだが。
思考がまとまらないままに思うと、不意に手を離されて大きくため息ひとつ。
あれ、何か自分は重大な失敗をしてしまっただろうか……?
「僕は、母の日に母さんに小さい子がもらうような券を誕生日にもらったのか」
「ルビー、その、これは、」
「そうだよな……“扉歌舞伎犬”って何かと思ったけど」
「?」
とびら、かぶき、けん?
どんな複合造語だ。
「エメラルドには期待しけ、って言われたんだけど」
ボソッとつぶやくルビーの声。
現代社会を生きる上では不必要極まりない、小さな音まで聞き取れてしまう耳は聞いてしまう。
聞けなくてよかったのに、よりにもよってエメラルド。
『相思相愛なんだし、ちゅーの一つや二つでもプレゼント、ってどうだ?』
『普通なら、こーいうこと、考えるんじゃないの?』
「…………う、うう」
リフレインしてしまう言葉に、どうしていいのか分からない。
しちゃう?
でもそんな、軽い気持ちでできるようなことじゃ、ないし。
私は………………私は、私は!
どうすべきなのだろう。