文章

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人の記憶は長くは続かない。

僕も人間なのだから、例にも漏れずに忘れていってしまう。

あの日、プラズマ団の演説が行われた日に、変な電波に会って。

忘れようとしていたのにまた会ってしまったから。

とりあえずは双子の目の前の、確実に年上だろうが常識はずれの彼の対処法を考えることにしよう。



 かばいあい

   〜side・touya〜



「久しぶりだね」


「えっとその……どちら様ですか?」


とっさに隠れてしまったものの、さてどうするか。

僕の双子の妹であるトウコだ、僕に似ていることは耳にタコができそうなくらい聞いてるから知ってるけど。


「あいつ、僕とトウコを間違えてる……」


成長過程、男女の差。

いくら似ていても、それくらいは分かるだろうと思うのだけれど。

君のミジュマルの声を、もっと聞かせてくれよ!とかなんとか言ってたけど、なんだやっぱり嘘か。

チェレンの言うことをもっと信じることにしよう、トウコの最初のポケモンはツタージャだし、
あいつの言う「ポケモン達の声」がちゃんと聞こえるなら、トウコと僕を取り違えてることに気づくはずだから。

ボールに入った状態で僕に話しかけてきたのはあいつだ、いいわけなんて聞いてやんない。

嘘つき。

小さくつぶやくと、隠れているのもバカらしくなった。

トウコを助けないと。

僕はトウコの兄ちゃんなんだし、何よりトウコはあいつに対して少なからず恐怖しているようだから。


「ねえ、今度こそは勝負しようよ」


「え?」


今度こそは。

それは、どう受け取ったとしても前回バトルをしなかった、としか思えないニュアンス。

もしかしたらあいつ、トウコがあの演説にいたのも知って……?


「トウコ…………大丈夫?」


気づいたときにはもう遅い、完全に隠れるのは不可能だと踏んだから出ていくと、
トウコもあいつも驚いたようだった。


「トウヤ……!どうして、ここに?」


「どうしてって、ジムの前なんだから、ジム戦しに来た。トウコは?」


「私は、ジム戦終わって……あっ、大変なの、プラズマ団が……!」


警戒しているようで、いつもより声も小さい。

こんな風に面と向かって、誰かに怯えているトウコを見るのは初めてだ。

けど、それにしても何を焦っているんだ?


「だってさ。帰ってくれ」


「そうだね。……じゃあまた、今度」


意外とあっさり引き上げてくれるようで驚く。

何となくだけれど、まだ絡んでくるんじゃないかと、思っていたから。





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