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明らかにホッとした風なトウコを現金だな、と思いつつもやはりとがめられないから、僕も兄貴面できない。
僕だって他人に対して、していいことと悪いことくらいは、分かる。
だけど、僕もこいつは苦手としているから。
「……と、言いたいところだけれど、トモダチはみんなヤル気になってしまっているんだ」
「………………」
間をたっぷり開けてからの、困ったような言葉。正直、殺意がわいた。
「トウコ、っていうんだね。キミがダメなら、トウヤ、キミならいいのかい?」
さて、どうしようか。
この緑色の髪の電波は、絶対にしつこいタイプと見受けた。
しかも、無意識に他人をイラつかせるような。
「トウコ、先に行って」
「えっ!?いいの、トウヤ!?」
まさか僕が残るなんて。
フッとわいた兄心に我ながら驚かされる。
いいから、とまだ立ち退こうとしない優しい妹の背を押して、年上の彼と対面した。
「まさかキミが受諾してくれるなんて。夢にも思わなかったな」
「たまには頼れる兄の姿を、恩着せがましく見せつけたくてね」
貴様が今回の元凶だ、何が『トモダチはみんなヤル気になってしまっているんだ』だ。
ふざけんな、僕はジム戦がしたかったのに。
トウコはアロエに勝ったのだろう、チェレンやベルももう僕の先に行ってしまっただろうか?
邪魔するなよ、一人でその、“トモダチ”と遊んでろよ!
ムカつきながら、ミジュマルをボールから出した。
「いけっ、マリン!」
ミジュマルも何だか、僕と同調してくれているような気がして。
僕が頼れるのはチェレンやベル、トウコだけじゃなくて、やっぱり一緒に旅してるこの子たちなんだな、と改めて感じた。
さて、殲滅してやるか。
(互いに互いを守りあって、何でかそのせいで、すれ違い始めてた)