文章

□3
2ページ/2ページ




明らかにホッとした風なトウコを現金だな、と思いつつもやはりとがめられないから、僕も兄貴面できない。

僕だって他人に対して、していいことと悪いことくらいは、分かる。

だけど、僕もこいつは苦手としているから。


「……と、言いたいところだけれど、トモダチはみんなヤル気になってしまっているんだ」


「………………」


間をたっぷり開けてからの、困ったような言葉。正直、殺意がわいた。


「トウコ、っていうんだね。キミがダメなら、トウヤ、キミならいいのかい?」


さて、どうしようか。

この緑色の髪の電波は、絶対にしつこいタイプと見受けた。

しかも、無意識に他人をイラつかせるような。


「トウコ、先に行って」


「えっ!?いいの、トウヤ!?」


まさか僕が残るなんて。

フッとわいた兄心に我ながら驚かされる。

いいから、とまだ立ち退こうとしない優しい妹の背を押して、年上の彼と対面した。


「まさかキミが受諾してくれるなんて。夢にも思わなかったな」


「たまには頼れる兄の姿を、恩着せがましく見せつけたくてね」


貴様が今回の元凶だ、何が『トモダチはみんなヤル気になってしまっているんだ』だ。

ふざけんな、僕はジム戦がしたかったのに。

トウコはアロエに勝ったのだろう、チェレンやベルももう僕の先に行ってしまっただろうか?

邪魔するなよ、一人でその、“トモダチ”と遊んでろよ!

ムカつきながら、ミジュマルをボールから出した。


「いけっ、マリン!」


ミジュマルも何だか、僕と同調してくれているような気がして。

僕が頼れるのはチェレンやベル、トウコだけじゃなくて、やっぱり一緒に旅してるこの子たちなんだな、と改めて感じた。

さて、殲滅してやるか。




(互いに互いを守りあって、何でかそのせいで、すれ違い始めてた)





前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ