文章
□電気ネズミと初対面
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アテンション!
・主人公のテンションの高低差が激しすぎる
・主人公がポケモン(ゲーム)が好きすぎて気持ち悪いレベル
・ピカチュウ(原型)が存在
・トレーナー不在のためいうこと聞かない
以上のことが許容できる方のみどうぞ。
今日もまた、つまらない1日が終わろうとしていた。
夕暮れ時特有の暖かくも寂し気な陽の光が射し込む廊下を、まぶしさに目を細めながら歩く。
下校時刻が刻、一刻と近付いているためかざわついた声がどこからともなく響いてきている。
いつものことなので気にすることなく飽和する声の中、階段を降りていくと同級生に遭遇した。
「あ、帰るの?」
「下校時刻ですし」
肩をすくめて窓の外に何気無く視線を移す。
日が沈むのも遅くなったものだ。
季節の移り変わりに付いていけていないような気がしてセンチメンタルな気分になりかける。
「そっかあ、そうだね。バイバイ、日津(ひつ)っち!」
「はい、また明日」
明るい笑顔で、私とは反対に階段をかけ上がっていく同級生。
部活のオリジナルTシャツには“暇だったらダッシュしよう!
階段ダッシュは新記録を産む!”と毛筆で書かれていた。
輝いて見えたその姿に、だけれど私も何か悪いことをしたわけでもないからと、傷んだ心に気づかないふりをした。
伊末 日津(いすえ ひつ)。
よく芸名か何かですか?と聞かれてしまう本名は、先ほどの同級生がいい例だが様々なあだ名を付けられる。
まだ“日津っち”なんていい方だ、昔は“末さん”やら“いっすー”なんて呼ばれたものだ。
あまり表情豊かでもないし、フレンドリーにできたことなど記憶の彼方にブッ飛んでも数えるほどしかない私だ。
何故こんなにもあだ名を付けられるのか、甚だ疑問である。
それはともかくとして。
やはり今日も――――――つまらない1日だった。
黒髪で無表情、赤色の目の男子生徒が転校生としてやってくるようなイベントも、当然のようになかったし。
中性的な顔立ちの赤毛でツンデレな男性が、新任教師として学校に赴任することになったりも、しなかったし。
何よりも残念なことは、黒髪ストレートが素敵なピンク色のブーツを履いた、
明るく活発的なミニスカートに赤色のスカーフをした少女に出会わなかったことだ。
いや、この際ブーツだのスカートだのスカーフなんぞは関係ない、あの子に今日も会えなかった。
その事実が私には悲しすぎたのだった。
「……決めました、今日は帰ったらプラチナをやることにしましょう。
本来ならばハートゴールドのハナダの洞窟に行く予定でしたけど」
ヒカリのためだ、仕方ない。
小さく呟いた声は誰にも聞かれることなく踊り場に落ちてくだけた。
私はゆるりと首を振る。
そう、私は世間的にいうアレなのだ…………重度のポケモン好き、というやつである。