文章

□メリーゴーランドは無限ループ
1ページ/2ページ




ジリジリと、私を追い詰めるかのごとく容赦なく照り付ける太陽をまばらな日影に入ることでやり過ごす。

長蛇の列ができているジェットコースターへの搭乗口は、まだずっと先に見えて萎える。

君は相変わらず、ぶすっとしながらも文句言わずに、
ポケットに手を突っ込んで地面を睨み付けていた。


「ええっと…………やっぱり列、なかなか進まないねー」

「…………」

ノーコメントですか。

私の方を見てもくれない君、ヒビヤくんにちょっとばかり心にダメージをくらう。

しかしこのくらいでめげてはいけない、ヒビヤくんを楽しませたくて今日は遊園地に来たのだから。

八月。

お兄ちゃんや団長さん、マリーちゃん達とは遊園地に行ったけれど、ヒビヤくんとは行ってないよね!

毎日のように暗い顔をするヒビヤくんの、力になりたいけど気分転換も必要だと思うから。

提案した内容は、自分的にはナイスだったのだがヒビヤくんてきには有り得ない内容だったようで。

そりゃあ、ヒビヤくんはヒヨリちゃんが好きなんだし。

分かるけど、そんな風にうつむいてる姿は見たくなくて。

どうにもうまくいかないけれど、どうにかしたいと思ってて。


「……っ、だからモモ!聞いてるの!?」

「へっ、わっ、ヒビヤくん!?」

考え事をしていたら、どうやら話しかけてくれていたらしいことにも気付かなかった。

君のことを考えて君に気付けないなんて、何だか本末転倒だなあ。

ごめん、と両手を合わせると別に大した用じゃないからいいんだけど、とのこと。


「このままだとジェットコースターにも乗れるか分からないけど、まだ並ぶ?」

「え?でも閉園時間はまだだし……」

「点検のために15時から運転中止。パンフレットに赤字で書いてあったよ」

ぴら、と見せられて驚く。

全く気付かなかった、それにこれが大した用でないのなら何が大した用になるのだろうか。


「じゃあもう、違うのに乗る?」

「別に僕は何でも……
 元からジェットコースターだって、モモが行きたがったから並んでただけだったし」

そっちこそいいの?なんて、ふてくされたような態度から一転、私を慮るかのように顔色をうかがう。

君を元気付けたかったのに、気遣われて、ダメだな私って。

不覚にも少しドキッとしたのがバレてしまいそうだ。

顔を隠したくて慌てて背を向ける。


「ヒビヤくん、なら、一緒にあれに乗ろう?」

深呼吸して心臓を落ち着かせてから、笑顔で片手を差し伸べながら振り返る。

刹那、大きく目を見開いて、悲しそうに顔をふせる君の真意は私には分からない。

ああでも、またやってしまったんだということは確かだ。

誤魔化すように君の手を引いた。






夏の暑さで嫌なことも溶けてしまえばいいのになあ、なんて都合がよすぎる考えが、ちょっと脳裏をよぎった。







次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ