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□メリーゴーランドは無限ループ
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君の手を引いて、着いた先はメリーゴーランド。

我ながら幼稚な選択をしてしまっただろうか?

きらびやかな白馬がかけるそれは、楽しげな音楽を流しながらも人があまりおらず、
どこか哀愁ただよっていた。

ここは元から少し年齢層が低めに設定されなかったため、
メリーゴーランドのようなアトラクションの数が少なく、対象年齢に至るような子がいないことが要因だろう。


「ここなら空いてるし。
 それに私、メリーゴーランド好きなんだ」

「変なの」

クスッとあきれたように笑いながらこぼすヒビヤくん。

あ、やっと自然に笑ってくれた。

嬉しくて心の中でガッツポーズ。


「ね、ヒビヤくんはどれに乗る?」

「何でもいいよ、別に……」

「じゃあ、これね!」

「え、“一緒”ってまさかそういう意味…………!?」

いまさら慌てたって遅い、ヒビヤくんを抱き上げて透き通るような水色の瞳を持つ、
青色の装飾品を身につけた白馬に乗せる。

当然のように同じ馬の後ろに、私も座った。


「なっ!?何してんの!?バカなの!?」

「ば、バカだなんて失礼な!……確かに成績は悪いけど」

自分から言っておきながら嫌な話の展開だ。

お盆の休みが開けたら、夏休みにも関わらず補習授業が再開してしまう。

できれば忘れたい、頭の痛くなるような予定だ。


「ね、暴れないでよ。落ちちゃうかもしれないじゃん」

「…………いっそのこと落ちればいいのに」

「ひっどい!何それ」

ぎゅっ、と背後から抱き締めて、優しい君が抵抗できないよう意地悪くささやくと、
悪意のこもった呟きに悪寒が走る。

優しいヒビヤくんなら私を落とさないように暴れなくなると、思ったんだけどなあ!

暴れるのを止めたのは事実だが、後で落とされては嫌だし、年頃の男の子に酷なことをしたかもしれない。

仕方ないよな、息を小さくはいて馬を下りた。


「っ、あ…………」

「ん?どうかした?ヒビヤくん」

私がヒビヤくんの前方の馬に乗り、振り向くとヒビヤくんは私を見ていて。

ばっちり二、三秒視線があってしまってからカラカラに渇いた喉を必死に機能させて問えば、
ヒビヤくんはうろたえたように視線をさ迷わせだす。

よくは分からないけれど、何か言いたそうな君の顔を見つめていたら、アトラクションが動き出した。


「うわっ!!」

急な動作に慌てて棒を前を向き、つかむ。

ゴツン、嫌な音がして額を思いきりぶつけてしまった。

絶対に赤くなってるんだろうな……明日、雑誌の撮影があった気が…………。

気のせいだ、きっとなんとかなるよ、ね。

驚かせてしまっただろうから、ヒビヤくんに手を振ろうと改めて後ろを向こうとする。

と、私は失敗から学べないのだろうか、馬が右へと反れる。


「うがぅっ!?」

がくんっ、と揺れる視界が生理的な涙で濡れた。

私の姿がを、繰り返したという日々の中を思い出させてしまったのだろうか。


「……ヒヨリッ!!」

「!!」

彼からの言葉は、まさかとは思えなくもなかったかもしれないもので。

言い終わったあとの、しまった、と言うかのような罰の悪そうな顔。

タイミングがいいのか悪いのか、メリーゴーランドは終わりを告げる。


「メリーゴーランドって、何度も繰り返すよな」

言いわけのように、君が地面に呟いた。


「……そうだね」

さあ、まだ時間はあるんだから次のアトラクション行こう!

空元気をだして君の手を引いて、先を急ぐ。

君の口からヒヨリちゃんの名前が出たとき、胸がいたんだのは何故なんだろう。

ずっと遊園地にいられたらいいのにと、また回り出したメリーゴーランドの音を聞きながら、不可能を願ってしまった。



 メリーゴーランドは無限ループ

 (何でも悪い方に考えるのはダメだと、思ってはいるはずなんだ)

























「私は今日も精一杯、がむしゃらにテンション上げて君を楽しませたいんだ」というメモと
オツキミリサイタル熱が冷めないままに勢いで書いた。

ヒビモモ!
可愛くないですかねヒビモモって!

罪悪感とかちょっと感じたりしてたら嬉しい←

お目汚し失礼いたしました!
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