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□交わらないふたつの世界
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今日はレッドさんの誕生日。

朝からひっきりなしに色んな地方からプレゼントやお祝いの言葉、それにケーキが届けられている
レッドさんの家は所狭しと物が置かれていて、違う人の家みたい。


「お誕生日、おめでとうございます!」

「おー、イエローもありがとな」


ニコッ、輝く素敵な笑顔をボクだけが独り占め。

えへへ、レッドさんの誕生日なのにボクがプレゼントをもらっちゃったや、なんて、浮かれすぎかな。

楽しい雰囲気にボクも何だか楽しい気分。

ピカやチュチュも楽しそう―――いや、彼女たちはいつでもふたり一緒なら楽しそうだけど。

じゃなくて、ボクもプレゼントを渡さなきゃ。

思いきって、黄色のビニール袋に包まれたプレゼントを差し出した。


「こ、これっ!プレゼントです……!」

「イエローくれるの!?
 ありがとう!すっげぇ嬉しい!」


目を輝かせて、開けても良い?と問う姿がとても可愛くて。

失礼かもしれないけれど、幼く見えるような純粋な彼が可愛くて仕方ない。

レッドさんにバレたら軽蔑されちゃうかなあ。


「ダイブボール!?
 珍しいボールをありがとう!!」

「いえ……こんなもので。すみません」


正直、ダイブボールなんてレッドさんは有り余るほどもってるかもしれない、
でも前にレッドさんがくれたボールだから。

ボクもレッドさんにお返ししたかったんだ。


「……?あれ、中にポケモンが入ってる?」

「はい、レッドさんにいただいたダイブボールで初めて捕まえたポケモンの子なんです」

「俺が孵したんスよー!」


ゴールドさんがチキンを食べながらピースして、自慢気に話す。

ダイブボールを見つめるレッドさんの目はまだキラキラしていて、でもカッコよくて。

ボクの捕まえたポケモンでそんな喜んでくれるなんて、予想以上で、やったあ!


「出してみてもいいか?」

「もちろんですよ!」


ポン、と音をたてて出される。

白い光の中から表れたのは、目を白黒させたルリリ。

寝てたみたい、ボクみたいに寝坊助な彼に部屋の明るさはまぶしすぎたみたいだ。


「本当にありがとな!
 ルリリ、大事に育てるよ」

ボクに向けられた笑顔、ボクに言った言葉。

ああやっぱり、プレゼントはこれで大成功だ!

きっと彼はルリリを育ててくれるだろう―――その分、レッドさんと話す機会も減ってしまうかもしれない。

それでも、ボクがプレゼントしたポケモンだという事実は残るから。

レッドさんには分からないだろうな、分からない方がボクも嬉しいけれど。

ボクの生きる世界とレッドさんの生きる世界が違うみたい。

そんなはずもないのにね。

世界が違うとしたら、ボクと彼との世界の接点は無いかもな……。

なんて、思ったって仕方ないけれど。


「お誕生日、おめでとうございます!」

「おう!」


繰り返される言葉に、彼はまだ笑顔を振り撒いて応える。

ボクの気持ちにも、応えてくれたらいいのに。

そのためには想いを伝えなければならないのだけれど。

大好きです、口の中でだけもぞもぞ言った。


 交わらないふたつの世界

 (まじわる時は、きっと来ない)




title by:確かに恋だった








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