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□彼が気付くことはないのでしょう
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レッドとエリカ



今日はレッドの誕生日です。

様々な地方の様々な人から慕われている彼なので、
今日はパーティーのお誘いがたくさんあっただろうに、何故か私と二人きりで海にいます。

いわく、自分の誕生日なのだから自分の好きにして何が悪い、とのことです
……彼らしくてむしろ潔いですね。

腑に落ちないような気もしますが、気に留めないようにいたしましょう。


「泳ぐつもり、ですか?」

「おう!……エリカは?」

「ここで待っています」


そう言うと思った。

はしゃいぐレッドは笑って、ポケモン達と海に走っていきます。

海に来ることはあまりないので……いえ、違いますね。

茶道や花道、書道などは一通り習いましたが、どうにも泳いだことはなくて。

それどころか水着を持っていませんし、身につけた自分の姿ははしたないのでは、と思えてしまうのです。

カスミならためらうことなく美しいフォームで泳ぐのでしょう、羨ましい限りです。

留守を任され、人気のない明るい浜辺に彼が置いたビーチパラソルの下。

着物だと傷んでしまいそうで、道中に若草色のワンピースを買ってもらいました。

日除けに、と麦わら帽子も買いましたが、したことがない格好なので似合っているか不安です。

レッドは笑って似合っている、と言ってくれましたが、私だって好きな人の前では自分に自信の持てる格好でいたいのです。

彼の言葉が信じられない彼女だなんて、そんなのひどいですけれどね。

彼は優しい嘘ばかりつくので、ついつい疑い深くなっていますが……必要以上かもしれません。

潮風にうっかり、麦わら帽子が飛ばされないようにしながらレジャーシートに座って彼を見ます。

ありきたりですが、水滴が本当に宝石のように輝いていて、まるで絵画のよう。

ポケモン達と競うように泳いだり、走ったり、せわしない彼は定期的に私に手を振ってくれます。

これが幸せといわず何を幸せといえばいいのでしょうか。

カスミやゴールドさん、イエローさんや私の知らない図鑑所有者のみなさんには悪いのですが。

平穏な二人きりの時間が、永遠に続けばと願ってしまいます。

午後になって。


「腹減った〜。エリカ、おにぎり作ってくれたんだよな?」

「海だと分かっていたら、もっと水分も持ってきましたのに……
 レッドが行き先を教えてくれないからですよ?

 熱中症になったらどうするつもりなんですか」

「悪い悪い。でもさ、びっくりさせたかったんだよ。
 いい所だろ?ここ。ポケモン達も平和そうで」

「そうですね。その点に関しては……感謝しています。
 ありがとうございます、レッド」

「へへっ!俺も、エリカと来れて嬉しいぜ。ありがとな」


屈託のない笑顔で笑う彼の頬にはご飯粒が付いていて、
可愛らしく思える私は重症かもしれませんね。


「まだ時間はありますが……どうしますか?」

「寝る。エリカ、膝貸してくんないか?」

「あ……はい、分かりました」


先程よりもゆっくりと流れる時間、心地いい時間。

髪を撫でれば、くすぐったそうにするレッドに心が満たされます。


「……でも、」


寝付いたのを確認して、太陽を見上げると白い小さな雲が横切って、影を作り出しました。


「人付き合いもしなくてはいけませんよ?
 もう、子供でもないんですから」


分からないでしょうけど、リーグチャンピオンともなったレッドは、子供という枠には属していないのですから。

もう一人前―――――“大人”です。


「でも、私と一緒にいてくれることは、素直に嬉しいです。
 ありがとう、レッド」


涼やかな海風に、髪が舞った。


 彼が気付くことはないのでしょう

 (世話を焼けるのも、嬉しいんですけどね)























エリカ様好きだけどよく分からない……
レエリってCPとしてはマイナーだけどひっそり推してます。
いえ、レッドさんが好かれるのは全部推してますけどね!

レイエと被った感ありますがお許しください。


 title by:確かに恋だった







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