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□笑顔も涙も見つめてきたの
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レッドとブルー



今日はレッドの誕生日だわ!

企画を三ヶ月前から練り上げ、待ちに待って作り上げたからパーティーに支障はないはず!

ガッツポーズしだす勢いの私だったけど、シルバーの一言で奈落の底に落とされた。


「だから、……姉さん?」

「シルバー、今のは嘘よね?冗談よね!
 本当のことを言ってよ、いやねぇシルバーったら!
 ジョークよね!?洒落や軽口なのよね!?」

「嘘だと言えたらいいけど姉さん、残念ながら事実だよ。
 レッドさんはイッシュ地方に旅立ったらしい」

「何故今日になって行くのよ!?
 普通は彼女が誕生日パーティーを主催してたら遠方の地になんて赴かないでしょうがあのアホ!

 去年は旅立ってなんかなかったじゃない、それに……
 あああもう、腹が立つわ!私もイッシュに行ってくる!」


困った顔のシルバー、ごめんね、あなたには何の責もないのに。

そう思っていると、シルバーはおずおずと白色の封筒を差し出してきた。

何かしら、コレ。


「そのことなんだけど。レッドさんの家の机に、これが」


封筒は私宛て、中身を開ければ……。


「はあ!?何なのよアイツ!!」


本日10時出港の、イッシュ行きの飛行機のチケット。

追え、ってこと?

事前に連絡くらいしときなさいよねバカ!


「私……私、どうしよう、シルバー」

「行ってこい」


困惑して動けなくなってしまう私とシルバーを動かす、鶴の一声。

こんなことだろうと思ったさ、とでも言いた気なグリーンが
ジーパンのポケットに片手を入れた状態で立っていた。


「後は俺に任せろ。お前はレッドを追え」

「グリーン……!ありがとう!!」


飛行ポケモンに乗り遠ざかっていくブルーを見ながら、グリーンはため息を吐いた。

サプライズで仕組まれた、レッドとブルーの二人だけのイッシュ旅行。


「シルバー、よくやったな。

 しかしレッドも、張り切るブルーに悪いからと言って言わなかったが、
 言わない方が悪いとは思わなかったのか」

「…………騙すのは気が引けましたけど、姉さんならきっと、サプライズの方が喜ぶから」

「まさかお前の入れ知恵か?」


シルバーはその問いには答えず、そっぽ向いてゴールド達の元に向かってしまった。

俺も後処理をしなければ、と頭を掻きながら奥に戻っていくグリーンが、
ゴールドに余ってしまったケーキを顔面に投げられたのは言うまでもない。





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