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「何、ゴールドだと!?
 泥棒をあいつに任せるわけにはいかない、君はここで待っていたまえ!」

さっそうと服をひるがえし行ってしまう警察官。

仕方なく端に寄って待つことにしたけれど、これじゃとんだ恥さらし。

はあ、と地面に暗い気持ちを吐き出してしまって、心配そうなネイぴょんと目があった。


『……逃げないの?』

「私が悪いんだもの。
 それに、警察官の方に呼び止められたのよ、一年間ここで暮らしていくなら、
 ファーストコンタクトは最悪でもいい印象を残したいじゃない」

『計算してるみたい。僕はそういうの嫌いだなあ……ぺっ』


ぺっ、って吐いたフリをするネイぴょんに汚いから止めなさい、と注意するけれど何を吐いたんだろうか。

足元を見つめていると、スケボーに乗ったメガネの、前髪が爆発してるんじゃないかと思うような
同じ年くらいの男の子が、よっ!と気さくに声をかけてきた。

……誰?


「よっ!さっきドロボーって叫んだの、俺なんだぜ?
 なあなあ、お前魔女なんだよな!?すげえ、何で鳥とか連れてるんだ?
 箒見せてくれよ!」

「…………」


何なのだろう、この失礼な人は。

警察官には悪いけれど、この人とはあまり話したくない。

ゆっくりとその場を離れて歩き出すと、この人も付いてきた。

不意に歩き出したせいでネイぴょんがびっくりしてる。


「なあ、見せてくれたっていいじゃねーかよぉー」

「何だよゴールド、ま昼間っからナンパかよ」

「ちげぇーよカーバ!」


少し奥に入っただけで不良の溜まり場のような場所に不良のような人たちが溜まっている。

明るく返す付いてくる男の子に、だったらどこかに行ってくれないかしら、と心の中だけで愚痴をこぼした。


「本当に黒い服、着てるんだなあ!
 箒もでかいし年期入ってそうだし、呪文とか唱えたりすんの?」

「っ、」


魔女を何だと思っているんだろう。

感情にまかせて向き直り、初めて見た金の瞳を睨み付けて声を荒らげた。


「助けてくれてありがとう、でも助けてほしいと頼んだわけじゃないわ。
 それに、初対面でいきなり名乗りもしないで話しかけてくるなんて失礼よ!」


行こう、ネイぴょん。

目配せして早歩き、メガネのそいつは何故か、うちのばーちゃんみたい!と喜んだ模様。

待てって言ってるだろーが、口の悪いあいつはまだ話しかけてきて、仕方なく行使する強行手段。


「って、あ!」


空飛ぶ私に、すげーや!と感嘆した声が聞こえて、あんなに嫌なのに少し嬉しく思ってしまう。

私って単純ね、ため息をついた私に何を思ったのか、ネイぴょんは一声小さく鳴いた。 



 町の

  (何だか幸先不安な模様)






Thanks to禅(仮)様(元折り畳み傘様)!
お礼は「diary」の2013年8月20日にてさせていただきました!ありがとうございました!


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