文章

□違う、好きだからだよ
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※少し歪んでます、病んでます。
 首を絞める描写があるので苦手な方は注意です。






グリーンとブルー



うだるような暑さが、ようやく少し収まったかと思ったのに。

文字通り蒸し返した暑さに苛立ちを隠しきれず、何が省エネよクールビズよ、とうめいて机に突っ伏した。

いてッ、当たり前なのだけれど額を思いきりぶつけてしまった、痛いし暑いだなんてサイアクだわ。


「暑い〜……ねえグリーン、私ってここ最近は常々ずっと、
 クーラーの設定温度が27℃ってむしろ環境破壊だと思うのよ、パラドックス的に」


うちわで自分の顔をあおぎながら愚痴をこぼせば、回らない頭でパラドックスは逆説的という意味だから
これでは的的、なんて意味不明なことを言っちゃったかもしれないわね、とぼんやりと思った。

とにかく暑いのだ、耐えられない暑さではないと彼は言う、それは分かる。

現に私だって、ついさっきまでは無言で耐えていたのだ。

耐えて、給料やねぎらいなんかが一切ないけど、トキワジムの書類仕事を手伝ってあげていたのだ。

何故手伝っていたのだろう……確か、ブルーちゃん超絶優しいわあ!と自分で言いながら
恩を着せるために恩着せがましく手伝い出したんだっけ?あれ、自業自得?

そんなことはどうでもいいわ、と邪念を振り払い
おざなりなうちわで送られる風量を強めながらグリーンに視線を向けた。

からん、ガラスのコップにたくさんの水滴を付着させて、コーヒーの中の氷が音をたてて崩れる。


「口を動かしてないで手を動かせ」

「ゔ〜……私は親切にも手伝いに来てあげてるのに。
 労働基準法をないがしろにしているわ!私が訴えたらグリーンは確実に損害賠償を私に払うことになるわね」

「親切心でやっているなら労働基準法は関係ないだろ」


む、それはそうね。

何だかんだ私が言うのに答えてくれるあたり、あいつも仕事に飽きたのかもしれない、
普通に疲れたのかもしれないけど。

チャンスだ、駄弁ってあわよくばクーラーの設定温度を下げたい。

下げたらヤル気出ると思うのよね、きっと……夏休みに宿題がなかなか進まない子みたいないいわけ。

私は夏休みも宿題も無かったから、全部推測だけどね。

こうやって考えると、塾帰りくん、ないし、ちゃん達は大変なんだなあ。


「…………かゆい」


思いとは裏腹に、出てしまった発言は平凡で、そして相手の意識をもってくるのに最適だった。

わお、意図せずグッジョブ私。


「蚊でもいるか?」

「分かんないわよ、あーもう、暑いしかゆいし痛いし!イライラするわ!」

「俺に言われても困るんだが」


まったく、といった風にクーラーのリモコンを触るグリーン。

やったわ、すぐさま勢いを強めた冷風がぶおお、と頭上から天国に誘ってくれる。

涼しい……が、蚊取り線香を出してきて焚かれてしまうせいで煙りにモヤモヤする。

快適な生活は不可能なのかしら、ジムリーダーって本当に楽な仕事じゃないわね。
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