文章

□けれども想いは届かない
1ページ/1ページ





レッドとプラチナ



今日はレッド先輩の誕生日でした。


初めて彼の姿を見たのは、今から数年前のカントー、セキエイ高原で行われたリーグ決勝戦。

死闘を征した彼に心を奪われたのは、その日からずっとです。

初めて彼に会ったのは、旅を終えてギンガ団と決着を着け、
図鑑所有者の先輩方に会わないか、とお父様に言われたときでした。

嬉しくて、恥ずかしいのですが前日はほとんど眠れなかったことを今でも覚えています。

明るくて優しくて、頼りになる素敵な、強い先輩。

お会いするのはまだ数えるほどで、緊張します。

ですが、どうしても会いたかったのです。

彼と知り合えて初めての、彼の誕生日なのですから。


「……よし」


気合いを入れ直してから、ドアをひかえめにノックします。

高鳴る鼓動を押さえつけながら、中の彼は私を見たらどんな反応をするだろうかと気持ちも高揚して。

早く扉が開かないでしょうか!

この一瞬一瞬が永遠のように、刹那のように感じられます。


「…………?」


いつまでたっても返事はありません。

留守でしょうか?

だったら仕方ありません、もしかしたら居留守かもしれませんし……
プレゼントを壁に立て掛けて、店員さんに作っていただいたメッセージカードを見えるように添えました。

これでいいのでしょう、私だと、名前は書いていないのですが気づくでしょうか?

我ながららしくないようですが、たまには純情なはずの乙女心に従ってもいいはずです。

諦めきれなくてもう一度ノックして、やっぱり返事はありません。

帰りましょうか。

誰に言うわけでもなく呟いて、憧れの彼の家に背を向けました。


「―――――あれ、プラチナ……だよな?」

「!」


ずっと呼ばれるのを待ってた、一目でいいからまた見たかった。

そんな彼が、どこにいたのかこの辺りの地理に詳しくない私には全く皆目見当もつきませんが、私の前にあらわれたのでした。


「ごめんな、ちょっとランニングしてて。
 寄って行くだろ?」

「お邪魔してもいいのですか?」

「もちろん」


久々に見た、彼の笑顔。

後輩に向けてくれる、私一個人に対してだけではない笑顔だけれど、それでも目眩がするほど素敵です。


「紙袋?あ、今日、俺の誕生日だからか……誰からだろう?」

「あの、それ、」


そうだった、ドアの横に置いたそれに気づけてもらえてたまらなく嬉しい私がいる。

自己申告しようとしたけれど、私には向けることがないような心からみせるようなとろける笑みで、彼は小さく呟いた。


「嬉しい…………イエローからのだと、いいな……」


私は、こんなに想っているのに。

怒る気にはならない、元から不毛な恋心。

だから行き場がなくなって、こんな時はどうしたらいいのでしょうか。

分かりません、こんなこと、誰からもどうしていいのか聞いたことはありません。

誰も教えてくれたことが、ないのです。


「私、やっぱり……ごめん、なさい!」

「え、待っ!? プラチナ!?」


彼が私を呼んでくれてる、まだ嬉しい気持ちがあって自分に吐き気がしました。

追いかけては来ない彼に、私はまだこんなに想っています、と思ったって仕方のないことを思ったのでした。


 けれども想いは届かない

 (分かっていたはずなのに、どうしてこんなに苦しいのでしょう)
























ラストがプラ→レ→イエという面倒な構図ですみません。

やっとレッドさんの誕生日を祝いきれました……!
レッドさんもてもてですね!やっぱ素敵だものね!

蛇足ですが、バカな私は「総受け」ってレッドさんのようなモテモテ状態なんだと、ついこの間まで思い込んでいました。
違ってたんですね……だから友人に「レッドさんは総受けなんだよ!」って言った時に驚かれたんですね……。


8月のうちに祝い終えることができてよかったです!
レッドさん、お誕生日おめでとうございました!


  title by:確かに恋だった





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ