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□あなたを忘れることを許してくださいますか?
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みんな、ボクのことがキライなんだって。

あたりまえだよね、わかってるよ?

だってボクは。

だいきらいな、むくわれないような、そんなあくむをみせてしまうポケモン。

でもね、ボクにだってココロがあるんだ。

みんなとなかよく、したいって、おもうんだ。

だから、そんなにおこったかおして、ボクをおいはらわないで?




 ***




うまれたときから、きらわれていたボクだったから。

さいしょにはなしかけてくれたとき、びっくりしたんだ。

てっきりボクは、みえないんだとおもっていたから。

それにキミはニンゲンで、ボクはポケモンだったから。



「どうしてみんなに、悪夢を見せるです?」



わかりません!ってかいてあるみたいにわかりやすい。

みんなこまってるですよ、そういわれてもボクだってこまってしまった。



「………………」


「…………答えてくれないですか」



いいわけすると、ボクはそれまで1かいだって、だれかとはなしたことがなかったんだ。

はなしかたも、わからなかったんだ。

おかしいよね、それなのにコトバはわかるって。

ひとりごとがおおいからかな、わすれてるだけでボクにも『おかあさん』がいたのかな。



「アオちゃんはアオちゃん、っていうですよ。キミはどんなポケモンです?」


「……ダークライ」



そうですか、ただそういっただけなのに、ボクはアオちゃんのえがおにどっきりして。

そのひからボクらは『ともだち』になったんだよね。



「ダークライ、一緒にお昼寝してもいいですか?」


「…………ダメっていうよりまえに、アオちゃんはいるね」


「えへへー、褒めても何も出ないですよっ」



ニコニコわらって、まどろんでいたかげのちかくのボクにすりよるアオちゃん。

とまどうことばっかりだけど、アオちゃんはともだちだから。

いっしょもうれしいし、それに、ボクをキライにならないっていってくれた。

ボクもアオちゃんをキライになるわけない。

ボクはしあわせなんだなあ、しあわせってこういうことなんだね。



「……ダークライ、もう寝たですか?」


「おきてる、よ」


「…………つまんない話をするですから、寝ちゃってもいいですよ。
 というか、寝てほしいです」



うとうとしていたら、そんなこと。

へんじ、しないほうがよかったかも。

えがおとなきがお、たいきょくのはずなのに、なきそうなかおでアオちゃんはわらった。

つられてなきそうになって、あわててボクはめをそむけた。



「アオちゃん、実はとってもズルいんです。
 ダークライが優しすぎて、アオちゃんはもう笑うしかないんです」


「…………?」


「アオちゃんはダークライが1人って知ってたです。
 仲良くしてくれるの、分かってて近づいたんです。ズルいですよね」


「…………!」



そんなことない、いいたいのになんで?

ことばが、くちからでないんだ。

アオちゃんはボクがこたえなくても、そのままつづける。




「アオちゃんはダークライ、嫌いになんてなれないです。
 ……ダークライはアオちゃんのこと、嫌いになってもいいですよ?

 でも、嫌われたくもないですよ。矛盾、してるですよね」


「…………、」


「でも。
 でも、アオちゃんは、そんなアオちゃんを分かってもらって、友達でいたいと、思うです。

 ダサいです、分かってるです。困らせるのも分かるです」



なんでくるしそうなの、アオちゃん。

かわいいえがおが、いまはなきそうにゆがんでる。

かろうじてわらっていたくちもとも、いまはなきそう。

ぜんぶなきそうなアオちゃん。

ボクはどうしていいのかわからなくて、アオちゃんのかたをなでた。



「優しいです。ありがとうです、ダークライ。
 …………ずっとずっと、一緒です」


「ずっと、いっしょ」



ボクがいったら、うれしそうにわらって、ねいきをたてはじめた。

ボクはつい、わすれてしまってたんだ。

こんなしあわせが、おわるなんてかんがえもせずに。
















「ゔっ……く、ぅ…………っ」


くるしそうなアオちゃんのこえにめがさめて、どうしたのかな?

かおをのぞきこんで、やっとおもいだした。ボクはあくむをみせるポケモン。

アオちゃんは、あくむをみているんだ。



「アオちゃん、アオちゃん!おきて、おきて」

「う、わあああっ!」



よそうがいに、きゅうにとびおきたアオちゃん。

ボクのかおをみて、えへへ、いたずらっこみたいにわらった。



「アオちゃんね、変な夢見ちゃったです!
 でも、ダークライがいるから全然、怖くなかったですよ」



ありがとう、っていってくれて。

アオちゃんといると、わすれちゃうんだ。

ボクがきらわれてるって、あくむをみせちゃうって。



「もうこんな時間です!帰らなきゃです、……ダークライ」



これでさいごです、1にちのさいごにボクにギュッとだきついて。



「またあしたですっ!じゃあね!」



てをふって、はしっていってしまう。

のびるかげが、なんだかおおきくなったりちいさくなったりで、たのしくなっちゃう。

アオちゃん、アオちゃん。

ボク、アオちゃんがだいすきだよ。

キライになんかならないよ、だからどうか。

ボクのこともキライにならないで。
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