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□たとえば僕が許せないのは
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バッカみたい。

嘲り笑っても彼女の目は僕を捉えてはいなくて、その事実に僕は無性に腹が立った。


「ねえ、聞いてるの?」


髪を無造作に掴んで、自分の目の高さまで持ち上げて問う。

合わせる気のない瞳が、刹那だけ気だるそうに僕を流し見てそのまま壁の時計を見つめた。

かち、かち、かち。

秒針の動いていく音、一定のそのリズムに合わせるかのように閉じられる大きな瞳。

まつげの長さを改めて綺麗だと感じて、だからこそぶっ壊したいと、
また思ってしまう僕をみんな病んでいると言うだろう。

病んでいる?それがどうしたというのだろう。

予想を裏切るようで悪いけれど、僕は一般常識を持ち合わせていながらに病んでいるのだ。

逸脱した行動をすれば、行動を顧みて自己嫌悪に駆られる。

例えばこうやって、何でもないように彼女の髪を鷲掴みにしているわけだけれど、
意識した今この瞬間から自分に吐き気を催している。

汚い、自分なんて、何故存在しているのだろう。

誰に存在を、許されているのだろう。

死にたい、と冷静に思いながら彼女を乱雑に離す、重力に従って解放された頭が床に落ちた。

ゴス、重苦しい嫌な音がして、つうと額に血がつたう。

白い肌に映える赤が綺麗だと思いながらまた自己嫌悪に駆られる僕を、彼女は知らない。

知られたらどう思うだろう?

変わらずに、その視線を交合わせてはくれないだろうか。

いっそその方がいいのに、ゆっくりと立ち上がりつつある彼女の頭に、予兆も無しに足で踏みつけた。


「うがっ……!!?」


驚いたような小さく低い、生理的に反射的に発せられただろう声に満足感を覚える。

同時に、人間としてグズな行動をとっていると思うと、もうこれから生きてはいけないとも思う。


「ははは、ザマアないな」


笑いながら、乾いた声で感情を込めずに感想をもらす。

あああ、何をしているのだろう、僕は。

頭がぐちゃぐちゃだ、考えがまとまらない。

とりあえずちょっと待って、思考がまとまらない。

まとまらないなりに錯誤しても答えは出ず、フィーリングで、本能的に動いてしまおう、と
欠片だけ残っていたはずの理性がはじけ飛んだ。


「バーカ。どうせなら意識、トばしちまえよ」


僕が意識を飛ばしたい所だ。

彼女の頭が無様に、あんなに固いはずの骨も砕けちって割れて、
脳の中からドロリとした液を靴下に付着させながら、足蹴にし続ける。

気持ちの悪い光景だ、どうして僕はこんなことをしているんだっけ。


「君が僕を認識しようとしないから、いけないんだよ」


口走った言葉さえ理解できない、死んだのは彼女なのか、僕なのか。

薄く開かれた彼女の濁った目からは、汚れのないひとすじの雫が、つうと流れた。

遊び尽くして僕が満足したら、すぐ後を追って死んであげるから、ちょっと待っていてね。

知らず知らずの内に忘れたはずの笑顔が、顔に張り付く。

この笑みは、どこから来ているんだろう。

足をスライドさせて思い切り踏みつければ、ぽきりと肋骨の折れる、小気味のいい音がした。


  たとえば僕が許せないのは

  (無力で身勝手な僕だった)









        title by:たとえば僕が












今世紀最大の迷子作誕生の予感に恐怖しながらも書いてみました、するとどうでしょうか。
予想を上回る気持ち悪さ胸くそさ。
最低!

迷子どころの騒ぎでなくて申し訳ありません。

別にそういう趣味は私にはありませんが、何だか急に書いてみたくなって書きました。

没にすべきなのに勿体ない精神でdustにいきませんでした。


お目&心を汚してすみませんでしたあああ!

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