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□つよい子になんてなれない
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セトマリ


※カゲロウデイズ攻略後から数年後設定。若干2人とも病んでいます。








香りのいい桃色の花を腕一杯に摘んで、走って来たのか
頬を花より濃い色に染め上げたマリーが息をきらして俺の部屋の扉を開いた。


「わっ、どうしたっスか!?」


いつものような淡いノックもなしに現れた彼女に驚きながら体を案じて頭を撫でると、少しだけ嫌そうに身をよじった。


「あのね、キドとシンタローとコノハと一緒に、おうちに帰った日があったでしょう?」


「日記を見つけたって、言ってたっスよね」


「うん。もう日記は必要無いから―――置きに戻ったの」


寂しそうに目を伏せて微笑むマリーに何と声を掛けたらいいのか分からず、行き場を失った上げたままの手が空を掴んだ。

あの日、一夏の忘れられそうにない思い出。

メカクシ団がメカクシ団ではなくなった、そんなあの日。

あれからもう、数年が経過した。


「一人で行けたっスか。偉いっス」


「えへへ。ありがとう、セト」


でも『いい子いい子』は小さい子じゃないから止めてほしいんだけど、
膨れっ面してみせる彼女に曖昧に笑い返せば、不服そうに眉間にしわを寄せた。

次の刹那には腕から花がポロポロとこぼれだして、そうだったと思い出したかのように抱え直す。


「この花、おうちの近くに生えてたの。綺麗でしょう?」


「マリーの白い髪によく似合うっス」


「そうかな?セトとか、モモちゃんとか、キドの方が似合うと思うよ」


でも嬉しい、と照れながらも笑う。

笑う彼女が花に赤い目を向けた。

とたん、美しさを保ったままにわずかな動きも拒否し出す花々。


「こうすればキレイ。でも、すぐに解けちゃうから、枯れてしまう。
 私が死ぬよりも、当然のように前に」


悲しくつぶやかれた言葉に心当たりはない。

金の目を見開いても、赤くなければ彼女の本心は分からない。


「セト、私、ひどいよね。時々考えちゃうの。
 セトがいなくなる前に、私は死んじゃいたいって。
 セトに死んでほしくない、って」


でも、そんなの無理って分かってるよ?

容姿に相応しくない言葉で、大人びた仕草で、マリーは花びらをつついた。

動きを止めた花は、まだ美しい。


「いっそのこと石にして、私が死ぬまでそばにいて!
 そんなことしたくないけど、セトがいなくなるなんて、もっともっと嫌だよ!」


「俺も嫌だよ」


久々に吐いた本音はか弱くて、カノじゃなくても今まで欺いていたみたいだった。

ス、なんて軽い言い方なんかじゃない。

弱虫の『僕』と同じ、変わらない『俺』の本心。


「俺もマリーと、ずっと一緒いたい。
 花ほど短くは無いけど、俺の命もマリーほど長くはない。
 いつかは死んじゃうけど」


死んでも守るから、ずっと側にいるから。

何があっても絶対に。


「約束だよ」


零れまではしないまでも、濡れた瞳に見詰められた俺はあの日と変わらず少し怯えた顔。


「……うん、約束」


無理でも、信じたかったんだ。

あのころより強くなれてる自信はないけど、優しくできたらと思ったから。

時間の動き出した花がひらひら舞う。

はら、と最後に落ちた花びらは、ゆらゆら揺れて潰れて消えた。


 つよい子になんてなれない

 (だって僕は、ズルできちゃう卑怯者だから)


   title by:休憩



























セトが書きたかったのに何だこれ。
セトが誰、な感じですみません。

キドカノセトでまたセトのリベンジをしたい……!

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