文章
□世界を騙す大きな片思い
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「…………セト」
お風呂に入りに行っちゃったセトを待つ間、暇だからベッドに腰かけて足をブラブラさせる。
初めて会った時は、私もセトもこの高さでは足が届かなかった。
今では私だけが足を着かせることができなくて、取り残された寂しさが募っていく。
「いつかはセトも、死んじゃうんだ」
こんな風に手を引いてくれるセト。
優しくしてくれて、犬みたいに、いつもじゃないけどそばにいて慰めて励まして。
大好きだよ、でも、すぐ死んじゃうセトにそう言うと私が辛いんだ。
残されて、遺されたものを腕に抱き締めて生きるのが苦しくて寂しいのは、
お母さんがいなくなってしまった時に十二分に学んだから。
「……痛っ」
おかしいな、頭が何でかズキン、一瞬だけ痛みが走った。
前にもこんなことがあったような……その時はどうしたんだっけ?
何故だろう、思い出せないや。
その時にセトもいたと思うんだけどな。
こんな風に、何回も何十回も何百回もいろんなことを繰り返す内に、私はいつか、セトの顔も思い出せなくなっちゃうのかな。
「そんなの、嫌だよ。絶対に嫌」
どうしたらいい?
逃れられない時の流れは残酷だ。
今さら過ぎるけど、そうだ、セトが死んでしまうのなら、その瞬間に私も死んじゃえばいいのかな。
「そうすればずっと、私はセトと一緒にいられるんだ……!」
堪らなく嬉しくて、ぼろっと目に溜まった雫が零れ落ちた。
それならこの片思いも実らせたっていいんだよね?
実るはず、だよね?
もしダメなら―――ダメでも、いいや。
私はセトが大好きだもん。
「セト。ねえ、セト」
死なないで、私の分まで長い時を、生きてくれないかな。
生きてくれたら、それ以上のことはないのに。
メドゥーサのクォーターである私と、人の子のセト。
違いは明快で、その理を壊してしまうのは容易で難解だ。
セト、これはどうしたらいいのかな?
いつも助けてくれる彼に、また答えを請いてしまう。
セトよりずっと生きてるのに、カッコ悪いなあ。
それでも足掻きたいのは無様かな。
こんな世界、いっそのことぶっ壊れてしまえばいいのに。
「私の力で、壊しちゃえたらよかったかな」
壊すことはできなくとも、全ての蛇の力を持ってすれば騙せるぞ。
妙に冷静な脳裏に語りかけられた『冴える』蛇の声。
今の私は聞いたことがないのに。
あれ?
私、どうしてそんなことを思ってるんだろう。
世界を騙す大きな片思い
(あなたのためだけに涙することさえ叶わない、そんな世界なんていらないの)
title by:花畑心中
セトマリのつもりパート2でした。
またもや駄文。
しかもいつ書いたのか記憶の彼方に消えてるほど昔のものです。恥ずかしい!
セトマリはこういう儚い系?やどうしようもならない系が好きです。
ぶっちゃけラストの蛇のくだりはこじつけなので不要です。
タイトルにこれ使いたかったのですが、こうする以外に使う方法が見当たらなかった!
……最後にもう1つだけ言い訳を。
全然しゃべらなかったけど、これでもセトが好きです。