いろいろ

□めまい
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(グリブル)


何てことのない風景がそこかしこにあふれている。
ありふれた、日常よく目にする光景。
でもここ最近、心情の変化かよく分からないけれど小さなことにも心が動かされるようになった。
たとえばこんな、花のつぼみが膨らんできたことにさえ。

「寒いけど、もう春がすぐそこまで来てるのね……」
「いや、まだまだ寒いだろ」

見上げた先のものは何日経過したら恒例の桃色の花を咲かせてくれるのだろうか。
指先でつん、とつついてみたかったのだけれどあいにく結構な距離があったせいで少しのジャンプでは全然届きそうになかった。
残念だ。グリーンの言葉の方が残念だけど。
残念っていうかひどいんだけど。
キッと隣の、無表情で棒立ちのまま白い息を吐く男を睨み付けてやると何だコイツという目で見られた。
仮にも彼女に何て視線を浴びせくれる。

「確かに寒いけど、もうちょっと言い方があるんじゃないのかしら」

ムッとしたまま言い放てば悪びれた様子もなく「悪い」と一言。
とてもじゃないけど謝ってるようには見えないわ!
そう言えば許されると思ってんじゃないわよボンボンが!
弟だから散々甘やかされてきたのかしら、いいわ、私が世間の厳しさを教えてあげるから!

「そんな言い方じゃあただでさえ表情が乏しいっていうのに、血も涙もない冷酷なジムリーダーという刻印を押されるわよ?それでもいいの?」

半ばヤケになりながら言えば、グリーンは顔はそのままに何だそれ、と興味なさそうに返す。
あきれたかのような物言いは今すぐため息を吐き出しそうなものでもあった。
やれやれ、といった風である。

「みんなに嫌われたって知らないんだからね、カントー最強のジムリーダーさん」
「お前は嫌わないだろ」
「…………はあ?」

たいして先程の言葉と何が変わったわけではない。
というか多分だけれど、さっきと何も変わらないと思う。
何よこいつ、自信満々?なんて思うけど、もしみんながグリーンを嫌ったとしてその時、私は果たして彼を嫌うのだろうか。
いや、嫌うわけないじゃない。バカなの?
そこまで考えて一気に耳にさえ血が昇るのを感じた。
バカなの、じゃない。何を考えてるんだ、私。
何を平然と答えてるんだ、あいつ。

「違ったか?」

ポーカーフェイスは変わらないはずなのに、きょとんとしながらもその中に悲しみの色が見えるのは何でなの。
どう言うべきか、答えるべきは分かる。
分かるけれど、私、そういうキャラなのかしら。
言っちゃっても大丈夫?
こいつに思いっきり引かれでもしたら立ち直れる気がしないけど?
それに、これに肯定の意を示すのはとてつもなく恥ずかしい。

「ち、がわなくもないわよ。バカね」

バカは私よ。
こんなに盲目的に信じられちゃっていて私を好きでいてくれていて、幸せすぎる状態じゃない。
そっぽ向いてやるとグリーンがそうか、と私の後頭部に返した。
でもそれ、すごく嬉しそうなのよね。
そんな風に声だけで判別できてしまっていたら、あんた顔がそのまんまでも気持ちが丸分かりよ。
怖いところなんて全然ありもしない。

「行くぞ。風邪を引きたいのか?」
「分かってるわよ。じゃあグリーン、あっち行きましょう?」
「…………」

はあ、とついに彼がため息をついた。
けれどもそれは私の言う方向に一緒に来てくれると何よりも雄弁に語ってくれているのと同じで。
くらくら目も眩むような、めまいを起こしちゃうくらいの優しさに、幸福間に私はいる。
駆け寄って右手を拾い上げると、互いに手袋だからもこもことしすぎていてちょっと繋ぎにくかった。
でもいいわ、何でもいいの。
こうできるだけで十二分にも幸せだもの。手を引いて歩き出す。
春の陽気には及ばないけれど少しだけ暖かくなった風が、二人と一緒に走り抜けた。


 めまい















グリブル書こうとするといつも散歩風景になってしまうのは何故だろう。
ブルーがアニポケのアイリスみたいになっちゃった。ごめんブルー。

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