企画

□秋といえば、が違くない?
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ピンポーン、なんて軽快な音を鳴らす。

ばたばたばた、と慌てたように走る音が中から聞こえたかと思うと、扉が唐突に開いた。


「よっ!」

よっ!、じゃないぞレッド。

平日に連絡もろくにせずやって来た相手にたいして、何故笑顔なんだ。


「やっほー、レッド。駄弁りに来たわよ」

「おー、サンキュな!」

家に招き入れてくれないレッドを無視して勝手知ったる、と言わんばかりに入るブルー。

言葉と行動がちぐはぐだぞ、何とかしろ。


「あれ?グリーンもいるのか。珍しいな」

珍しいポケモンでも観察するかのごとく、現親友、現在進行形で好敵手であるはずの
レッドはグリーンの顔をスレスレで言葉を紡いだ。


「近い」

「んー?今日はジムの仕事はないのか?」

何故いつもジムで仕事をしている、と決められているのだろう。

カスミを見ろ!よくデートスポットにいるらしいから。


「有給だ」

「普通に“休み”って言えよ」

レッドにつっこまれ、そうだなと返すグリーンをよそに、ブルーは台所に立った。


「あら、前より綺麗に使ってるみたいね」

「そうか?そうだといいけど」

和気あいあいとした雰囲気の中だが、グリーンは顔をしかめた。

ブルー、レッドの家の台所事情に何故詳しい。


「グリーン、レッド、飲み物入れようか?」

「俺んちなのに悪いなー。俺、ミルクココア!」

子供か、と思わずつっこみそうになったがこらえた。

コーヒーに挑戦してみろよ。

「私がロイヤルミルクティーで、グリーンは?」

「ダージリンでもいいか?」

え?とレッドが不思議そうな顔をした。


「ココアじゃないのか!?」

「当たり前だろう」

こいつに負けたなんて、今、一瞬信じられなくなった。

バトル以外はダメすぎるだろ、相変わらず。


「コーヒーじゃないのか?」

言い直したレッド。さすがに見くびりすぎたか。

最近はコーヒーばっかだったからな、と返すとレッドは興味を持ったようだった。


「つまり、コーヒーに飽きたのか」

「違う、ジムトレーナーにコーヒー好きがいてよく飲むが、あまり好きではないだけだ」

意外、とブルーが口をはさんだ。

……前に言ったよな、俺。


「じゃあグリーンが好きな飲み物は何なんだ?」

「特にないな」

正直に答えると、レッドは驚いたようだった。


「じゃあ今日からミルクココア……」

「全力で遠慮させてもらう」
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