企画

□目の前のものが見えてない?
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「映画館にでも行こうかって言ってたの」

「映画か……ゴールド、次は忘れるなよ」

シルバーに言われるとは思ってもみなかったのかしばし瞬きして意味を咀嚼して。


「ダチ公に言われたかねえよ!分かってらあそんなこと!!」

怒鳴るような照れ隠しが分かりやすすぎるゴールドだった。

「折角だし、これから3人で映画見に行かない?」

「出直すつもりなんじゃないのか?」

クリスが言い出したことに驚く。

つい先程『仕切り直そう』と言っていたのは彼女のはずだ。


「いーのよ別に。どうしても見たい映画があったわけでもないし」

ではどうして映画館に?なんて聞いてはいけないことは知っている。

以前姉さんが『女の子はみんな水族館デートや映画館デートに憧れるのよ』なんて
言っていた気がする。

覚えておきなさい、彼女が出来たときに役に立つからと言われたものの、
その知識は未だ生かされていない。


「そうだな、行こうぜー」

ことの発端であったはずのゴールドは反省の色を見せていた顔から一転、
笑顔で言い放つ。

でもいいのか?
ケンカの仲裁をした、という件があっがデート中だろ?

気を使うシルバーはオロオロと正解を求めて辺りを見回すも、何も見当たらなかった。

まあそんな回答の役に立つものなどが、普通に道端にあるはずもない。


「じゃあ、行くか」

「ええ、行きましょう」

3人で並んで歩き出す。

旅をしなければ、出会わなかったはずなのに、ずっと昔からの友のような存在。

3人の内1人を除いてカップルが成立してしまうと、大抵は居心地が悪くなり
関係は悪化し、自然消滅してしまうものだろう。

けれど『誰かを頼る』ことを知ってしまった今は、簡単には2人との縁を切れそうになかった。

そんなことをぼんやりと考えながら、この場所を2人と歩く幸せを噛み締める。




目の前のものが見えてない?


(邪魔者だけど、あと少しだけここにいさせて)

(2人とも、とても大切な人)

(親友も恋人も、どちらか片方なんて選べねえよ!)











このあとゴールドが金欠のため映画館には結局行けず、
レンタルショップでホラー映画を借りて見たそうです。


「金欠なら映画館で映画を見よう、なんて誘わないでよ!」

「いや……悪い悪い……」

「たちが悪いな、ゴールド……」



目の前の状況、関係は“大切な仲間”!
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