企画

□り(グリブル)
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「………」

むすっ、としたまま仏頂面で書類を片付けていくグリーン。


「えっと……どうしたの、かしら?」

いつも通りに見えるかもしれないが、ブルーは何かを感じ取った。

(それはそうね“女の勘”ってヤツよ、きっと)

ぶすぅーっとしたままのグリーンだったが、やがてため息を一つついた。


「12月24日、シルバーの誕生日らしいな」

「あらグリーン、何で知ってるの?」

確かにそうだけれど彼に教えた記憶は無い。

問えば小さな声で「レッドが盛大に祝ってやろうぜ!と押し掛けてきた」と告げる。

レッドって…………。

まあ盛大にやるのはおおいに構わないが、
シルバーにはシルバーの予定もあるだろうに。


「で、そのことと現状と、一体どんな関わりがあるのかしら」

「……イブくらいは、」

イーブイが鳴くような小さな声で紡がれる反論。


「イブがどうしたのよ」

「イブくらいは恋人と一緒にいたいと思ったんだが……」

「!!」

衝撃的すぎて思わず、きゅんときた胸を必死に抑える。

デレなのか?デレたのかこいつは!?


「で、でも24日も一日中シルバーの誕生祝いに費やす訳じゃないし!
 それに25日、クリスマスだって……あるじゃない」

我ながら変わりに提案ばかりして、何だか恥ずかしい気もする。

(でもそんなの、気にしたらダメよね)


「……?」

いつまで経っても返ってこない返事が気になって顔を除き込むと、
無言で見つめ返される。


「っ!」

もう一体、何なのよ今日は!


「誕生日くらい、そばにいてあげろよ」

「……え?」

24日だって一日中シルバーの誕生祝いをするわけじゃない。

自分で言ったけれど、確かに無情だ。

(姉、なんて言いながら……ひどいものよね)

じっと私の目を見てくるグリーンの視線に、耐えられなくなって視線をそらす。


「世界でたった2人の姉弟なんだろ」

「………うん」

そういえばグリーンにも“ナナミ”と言う名前の
お姉さんがいたなあ、なんて思いながら返す。


「それに25日は、家族と過ごすべきだ」

「え?何で?」

家族。

クリスマスって、家族と過ごすものなのかしら。

これまで家族のいるクリスマスなんて……知らなかったから。

分からない。

家族と過ごす、クリスマス。


「私にはお父さんもお母さんも、ちゃんといるんだもん、
 きっとそうなんでしょうね……」

だけど、家族だって大事だけど。

(ねえ、だったら私はいつ……)


「いつだったら、グリーンと一緒にいていいの……?」

「………」

肯定とも否定とも、場合によってはとれる無言の間。

この場合はYES・NOで聞いてないから、肯定も否定も意味分かんないけど。

どうしてこういう“話してほしい時”、肝心な時に黙るのかしら。

顔を上げてグリーンを見ると、何故だか彼の頬は赤く染まっていて。

(まるで何かを、恥じらうかのように)


「いつでもいいだろ、そんなの」

言い出したのは刹那。

いつでもいい、だなんて。

(グリーンにしては満点の答えじゃないの)

ぷい、と冒頭とは違う風にそっぽ向く彼。


「ねえ、もしかして」

今、不意に思ったことをそのまま疑問として問う。


「心配したり慮ってくれたのに……同時進行で妬いてた?」

「妬く?誰が誰に」

「あははーグリーンさん、冗談キツいッスよ」

口調がゴールドっぽくなってしまった。

でもさ、だってさ!

(私たちって一応は、一応なんだけど、とりあえず一応は付き合ってるのに!!)

でも、少しは。

(グリーンも妬いてくれたんだ……)

きゅっ、と行き場の分からない思いが蟠る胸に手をやると、
自分でも分かるほど心音が大きく響いていて。

嬉しいけど、恥ずかしい。


「グリーン、だったらさあ」

「何だ」

「25日は私の家でクリスマスパーティーをするわ」

だからその後に。


「部屋でケーキ待っててあげるから、来てよね」

「家族と食べろよ、ケーキ」

あら、食べないとでも思っているのかしら。

怪訝そうな顔をされてしまい、慌てて取り繕うかのように続ける。


「いいじゃない別に!ケーキは世界を救えるほど美味しいのよ!?」

我ながら言ってることが意味不明だけれど、気にしてはいけない。


「そうか」

にや、と口角を吊り上げて笑うグリーン。

こういう笑い方をする時、グリーンはいつも皮肉だとかを言う。

(多分気付いてないんだろうけど)


「ホールケーキを持っていってやるよ」

「本当!?」

体重とか頭をよぎるが、気にしてはいけない。

まだ若いんだもの!と強がっていいわけをしてみる(ちょっと無理があるかしら)。


「だから部屋で待ってろよ?」

「もちろん」

少し早めに、メリークリスマス。












配達の約束


(まっしぐらに目指してやってくるであろうあなたを、私はずっと待っています)

















あれ、レイエより短い?とか気にしないで下さい。
どう読んでもクリスマス前のことだけどクリスマスだと言い張る。←

デレて焼きもちをやくグリーンを書こうとしたらこうなった。
ブルーがひたすら悶えてる気がするけどスルー。

感想とかいただけると嬉しいです。
 

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