企画

□す(ダイ嬢)
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※ダイ嬢前提


クリスマスイブ。

クリスマスイブだからといって、
名家に生まれた才女であるお嬢様に休みは無いのだろう。

そのくらいは理解している、はずだった。

そのはずなのに。


「……はあ〜」

当日になってみると思いの外、町のカップルに目を奪われてしまう。

自分はどうして、なんて思ってしまう。

(オイラって、重いな……)

はあ、と再度重い息を吐くと、幼馴染みが顔を覗き込んできた。


「うわ!?なに、パール」

「いや、さっきからため息ばっかじゃんか。ダイヤ、何かあったのか?」

オレンジの澄んだ瞳が不安げに揺れる。

ああ、パールに心配かけちゃって。

(オイラってやっぱダメだなあ)

何でもないよ、といつものように返すと、パールは
そっか、とだけ言ってそれからは言及してこなかった。

クリスマスイブに幼馴染みと2人で町で買い物、だなんて。

パールに悪かったかもしれないなあ、と思うもののどうせ彼だって
こたつの中から漫才の特番を見るだけだっただろう。

まあいっか、なんてぼんやりと思った。


「で、何を買うんだ?」

「ん〜、決めてないんだ〜」

「お嬢さんにクリスマスプレゼントあげてみたらどうだ?」

なっ……!?驚いて彼を見ると、何故かニヤついていた。


「彼氏が彼女にプレゼントして可笑しな所なんてないだろ、な?」

「う、うう〜……?」

上手く丸め込まれてる気がしないでもないけど、とりあえずうなずく。

それより彼氏と彼女って……!!

事実のはずなのだけど、何だか気恥ずかしくて、
何となく頬が熱くなったような感じがした。


「あ、照れるなよ。俺らが付き合ってるみたいじゃんか」

「えっ!?」

いくらなんでもそれは話が飛躍しすぎだと思うよ、パール。

あまり同性愛に偏見を持ちたくない(差別はダメだと思うから)のに、
思わず偏見を持つような返事をしてしまった気がした。

うん。

オイラにはよくわからないけど、そういうのってお互いが好き同士なら
いいんじゃないのかな、なんて。

……オイラ、なんの話してるんだか。

適当な雑貨屋に入ると、どことなくお嬢様の部屋に
似たような物があったような気がする店だった。

お嬢様も好きなんじゃないかな、こういうの。

もちろん、お嬢様が普段買うであろう物よりも安いであろう商品を見ていると。


「ダイヤ、こういうのはどうだ?」

「え〜?」

パールが手で示してきたのは、対になる可愛らしいセットのマグカップ。


「可愛いけど、使うところが無いよ〜」

「だな、お嬢さんち行くと、高そーな薄い陶器のカップ出されるしな」

パールの言う通り。

庶民にはお嬢様に何をプレゼントしていいのか分からないよ〜。


「パール〜、今更ながらに思ったんだけどさあ」

「何だよ急に」

「お嬢様にプレゼントって、失礼じゃないかな」

「プレゼントの何が失礼になるんだよ」

いやあ、だってお嬢様だよ?

欲しいものは大抵手にはいるだろうし、
オイラが大して欲しくもないものを恩着せがましくプレゼントするなんて。


「恩着せがましくって、……プレゼントは相手の喜ぶ顔を
 思い浮かべて選ぶことが、肝なんだぜ?」

「そうなの?」

前にバラエティーでそんなこと言ってた気がする、と
記憶が曖昧なのか言葉を濁すパール。

でも、プレゼントなんてなあ。

お嬢様の喜ぶような物……何だろう?


「あ」

少しだけ、思い付いたことがあった。
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