企画

□カントー組
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※イエロー視点



「もう今年も終わるのねー……」

しみじみと。

緑茶の入った陶器のコップを片手でいじりながら、
ひじをついた体制でブルーさんはのんびり言った。

ひじをついている体制は行儀がいいとは言い難い(むしろ行儀が悪いといえる)けれど、
あと30分もすれば年が明けるというこんな時に、注意する人はいなかった。
(グリーンさんがTVを見ていて、あまりブルーさんを見ていないから注意されていないだけなのかもしれない)


「そうだな」

何も言わないとキレる、と睨むようにブルーさんの視線を感じとったのか、
グリーンさんは仕方ない、と言うかのようにため息をついて
見ていたTVから視線をそらして無難に返した。
(当然のようにコップをいじるのを止めて髪をいじり、ひじをつくのをやめるブルーさん。
やっぱり注意されるのは嫌なのかな)

ブルーさんはTVから自分へと視線が移ったからか、ふふっ、と小さく笑った。

案外ブルーさんはヤキモチやきなのかも。


「今年も色々あったけど、グリーンは何が一番印象に残ってる?」

「ゴールドにからかわれて真っ赤になっているレッドだな」

「え、それ何!?いつのことよ!?」

がばあっ、と体ごとグリーンさんに迫るブルーさん。

ゴールドさんにからかわれて真っ赤になるレッドさん、なんて(少なくとも僕は)見たことない。

どうしてグリーンさんはそんなシチュエーションを
緑茶をすすりながら無表情で言えるのだろうか。

グリーンさんが無表情なのはいつものことなんだけど、印象に残ったなら少し位は
ポーカーフェイスが崩れたっていいんじゃないだろうか。


「イエローに告ったかどうか聞かれt」

「人の家の人のこたつでくつろいで何を暴露しようとしてるんだグリーン!!??」

がちゃっ!と盛大に音をたてて開かれるリビングの扉。

あ、レッドさん。

大晦日である本日、ブルーさんの粋なはからい(?)により
僕達、カントー在住図鑑所有者はレッドさんの家のこたつで
カウントダウンパーティーをする所なのだが。


「レッド、年越しそばはもうできたの?」

「すまんな、どこかの自由気ままで奔放な、マサラ出身のカメックス使いが
 手作りにしろって言い出すから、まだ麺を切ってる段階だよ!」

「まあ大変ね誰のことかしら、でも麺を切ってる段階なら、あと少しじゃないの?
 頑張って!それと、“スタイル抜群の美女”ってのが入ってなかったのはどうして?」

「誰が入れるかよ、そんなフレーズ!」

ブルーさんがホホホ、と笑う。

レッドさんはキッ!と睨んだけど涙目だったから全然怖くなかった。


「ごめんごめん、ね、もうしないから。レッドは続きやってきて?」

「くぅ……!絶対言うなよ……!」

何だかんだ言いながらも謝るブルーさんと、それを許すレッドさん。

仲が本当にいいよなあ。


「イエローも、ごめんね。眠かったりしない?」

レッドさんがブツブツ文句垂れ流しにしながらも行ってしまうと、
ブルーさんが不意に近寄って聞いてきた。


「あ、はい!ちゃんと昼間に寝貯めしときました!」

「そっか、でも眠かったら寝ても構わないからね」

「ありがとうございます」

ブルーさんは爽やかに笑ってグリーンさんの向かいに座り直す。

TVではもう鐘が写し出され、『今年も一年……』なんて堅苦しいナレーションが始まっている。

本当に、一年なんてあっと言う間だったなあ。

この一年あったことを思い返しながら、こたつに入り直す。

例えば現在地、レッドさんの家。

一年前は場所は知っていたけれど行けるはずもない場所、だった。

まさかレッドさん自ら連れてきてくださったり、お茶に誘ってくれたり。

そういえば食事にも行ったな、と思い出すたび幸せな思い出に頬がゆるむ。

ブルーさんに見つからなきゃいいな、と思いながらも僕は回想を止められなかった。
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