企画
□ホウエン組
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「あけおめっ、たい!!」
「明けましておめでとう、サファイア」
着物を着ていつもより動きづらいはずなのに、フットワークがもとから軽いからか
軽やかに駆けて、サファイアは僕の家にやってきた。
元日。
僕の父さんがジムリーダーだし、彼女のお父さんも博士だし、と
何かと忙しくて、急いでもらったけれど彼女に会えたのは13時30分を回ってからだった。
「この格好、見せようと思ったけん、急いで来たち!」
「うん、似合ってるね」
「……本当にそげん、思っとる?」
藍色の、お正月にはいささか暗いかもしれない着物を彼女は着ていたけれど、
サファイアはよく着こなしていて、キレイだった。
なのに何故そんなことを言うのだろう。
彼女が何を不満に思っているか分からなくて、僕は思わず首をかしげた。
「その……だか、ら!!」
顔を紅らめて、彼女は数歩僕から離れて、言い放った。
「ルビーの作った服のが、あたしはよかッ!!」
ぷいっ、とそのまま、明後日の方向を向いてしまう。
もう……年明けからそんな可愛らしいことを言われてしまっては敵わないや。
「サファイア、よく似合ってるよ。今度は僕が作ってもいいかな?」
「……ダメなわけなかっ」
そのままじっとサファイアを見つめていたら、やっと顔をこちらに向けてくれて。
自然、目が合う。
「……ははは」
何となく笑いがこぼれて、2人一緒に盛大に笑ってしまった。
***
「ルビー、聞いてほしかッ!!」
やっぱり動きにくいから、と着替えに帰ったはずのサファイアだったけれど、
すぐに僕の家にやって来た。
まったく、俊敏な動きは大したものだけど、せわしないよなあ……。
そんなことを思いつつも僕は相づちをうった。
「どうかしたの?」
「昨日の夜、夢を見たけど、初夢になるか分からんし……んー、と……」
「んー……」
どうなのだろう?僕にもよく分からない。
初夢なのかな?……無難に、そうなんじゃないかな、と返しておく。
「じゃ初夢!あたし初夢見たと!聞いてくれん?」
よっぽど楽しい初夢だったのだろう、僕の周りを跳ね回りながら声高に言う。
うん、聞かせてよ君の初夢。
僕は残念ながら昨日は夢を見てないけど、今日は見られる気がするから。
君と同じ、初夢を。
「まず最初に……」
サファイアの話が始まった。