企画

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流れ行く雲を見つめる、若草色のシャツにワンピースといったラフな格好の少女。

草の上に座り込みラジオをぼんやりと聞いていたようだった彼女は、天気予報が始まり
ピクリ、と身を震わせる。


『翌、×月×日×曜日は全国的に晴れ渡り、カラッとした春らしい気候となるでしょう……』

「よし」

カチ、とラジオを切って立ち上がる少女。

しっかりとした足取りで坂道を上り、田舎ならではのデコボコした自然道を駆ける。

野性動物が通って開通させたと思われる、自分の通ることのできるギリギリの大きさの穴を通れば、
もう勝手知ったる我が家である。

ぱんぱん、と軽くワンピースを叩いてシワを伸ばしゴミを落とす。

完璧とまではいかないけどまあまあなはず……
ママはまだ仕事をしているだろうから、と仕事場をノックしてから開けた。

きらびやかな花々が咲き誇るビニールハウスのような仕事場で、ママが薬を作っている。

……と、常連のキクコさんまでいらっしゃる。


「クリス!どうしたんだピョン?」

「おやまあ、元気な子だねえ」

目を細めて笑う老婆にこちらからも微笑みかける。

ママの、いつも通りだけどおかしなテンションはとりあえず保留にしておこう。


「こんにちは、キクコさん!私、今日の夜旅立つ予定なんで心配で……
 今夜は天気もいいみたいですね」

「今夜?これまた急だねえ」

「え?秋の始めには決めていましたけど」

食い違い。

ママにもちゃんと言った記憶があるよ、私。


「…………」

「……」

嫌な予感しかしない。

ぼわっ!と試験管内の色が、お母さんが手をかざすと変化した。


「調合中悪いんだけどさ、ママ」

「だから、どうしたんだピョン?」

「私が今夜旅立つって……知らせて、ないの?」

「あ、そういえば」

嘘でしょう、頭を抱えたくなる。

そんな唐突に言ったらみんなだって迷惑だと、前々から決めていたのに。

けど今日行く、と決めたものを先伸ばしにはしたくないし……。


「もう、ちゃんと伝えておいてよ!!」

「ごめん、クリスー!」

キクコさんがいることも忘れて走り去ると、ママの焦った声が追いかけてくる。

ぼん!

黒色に変色してしまった試験管が小爆発を起こした。




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