企画

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もう、信じらんない!

自室にダッシュしてベットにダイブ。

旅に出る支度だってバッチリなのに。

ママってどうしていつも、こうなのだろうか。


『何かあったの?クリス』

ピョンピョン跳ねながら私に近付いてきたのはネイぴょん。

優しくていい子だ……たまにちょっとグサッとくることを言うけど。

真ん丸な彼に手を伸ばして頭を撫でる。


「聞いてよネイぴょん。ママがね、今夜旅立つことを近所の方に知らせていなかったのよ!」

『旅立つのって今夜だったっけ?』

「ネイぴょんまで……今日だよ、何度もカレンダー確認したもの」

そっか時の流れは早いなあ、なんてじじくさいことを言いながら首を伸ばす。

もっと頭を撫でてほしいようだ。


「あーあ、それにしても心配だわ」

『心配?何が?』

「…………修行」

絞り出すようにその単語を出して、ばふん、と枕に顔を埋める。


「自分で修行する町を探して1年暮らすなんて……12歳の少女にさせるの?」

『それ前も言ってたよね』

「だって……世の中いい人だらけ、ってわけじゃないもの。あー、憂鬱だなあ」

本当はそんなに旅に出たくない、だって住み慣れたこの場所の方が、私は好きなんだもの!

でも魔女のしきたりなんだから……ママの代で『薬草から薬を作る魔法』が途絶えてしまう今、
それすらも拒むだなんて私には考えられなかった。

ごめんね、ママ。

私がもっと優秀なら、ママの代で『薬草から薬を作る魔法』を途絶えさせずに済んだのに。

未だに引きずってる。

自覚すると更に辛い。

でもママにも悪気があったわけじゃないものね。

仕方ないか、と1階に下りて近所の方に電話を掛けた。


「…………はい、今夜。すみません、母が伝え忘れていたみたいで……」

あの人らしいよ、とみんな笑う。

ここの人たちみんなに育てられた、と言っても過言じゃないくらいだから。

私の門出を……見送ってもらいたかったの。

少し気恥ずかしいけれど、それとこれとは別、と区切りをつけて。


「よし、あと1件!」





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