企画

□予告チョコ
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週末に偶然出会ったシルバーにバトルをしかけたら負けてしまった。

ちくしょー、この前は俺が勝ったってのによ!

バーカバーカ、とののしったら冷めた目で見られて泣きたくなった。

しかしまあそんな過去の事、俺は何とも思ってない。

次のバトルにそなえてすごい傷薬買いに来たとか、そんなんじゃない。

とにかく俺はそんな理由からコガネシティはコガネ百貨店を訪れていたわけだ。


「相変わらず高ぇよ……すごい傷薬半額売りつくしセールとかやんねーかな」

すごい傷薬が陳列された棚の前で財布を確認する。

残高58円?

何も買えねえよ、何でここに来たんだ俺。


「ったくよう、世の中金が無きゃ生きていけないなんて、夢がないよな」

文句を垂れながらエスカレーターで階下に下がる。

と、視界に入るはまっピンク!

ハート型のピンクと白の風船があたり一面漂っている。

鬱陶しい、全部割ってやろうかな……
こんなイベントしてるなら、エレベーター乗れば良かったぜ。


バレンタインなんて、な。

どうせ今年も俺は、母さんからだけだろうから!







「……どっちに、しようかしら」

仕事が一段落したから、ちょっと休みをもらってコガネ百貨店を訪れた。

理由は簡単、アイツにチョコを作ろうと思ったから。

でも時間がないし、急な仕事が入るかもしれない。

時間がかからなさそうでなおかつ、見映えがよく美味しそうなもの。

それを求めて百貨店に来たのだけれど……。


「すごい種類、こんなにあるのも困りものだわ」

ありすぎて選べないだなんて、贅沢だ。

幸い仕事をしているせいで金銭面においては余裕がある……時間面に余裕はないけど。


「こっちにしようかな、いやでもゴールドにはこっちのが似合うかな」

似合うというか、喜んでもらえそうなものを選ばなきゃなのにね。

苦笑してしまう。

そうね、こっちのはシルバーっぽいかも。

シルバーにもあげよう、とカゴにチョコを投下した。







「っあー、オアツイこったなあ」

ピンクのハートの風船で更にハートを形作られたアーチ。

極めつけのように設置されたピンクのベンチに座るカップル。

あーいうのをバカップルっつーんだよな、人目をはばかれよ。

こっちがむしろ恥ずかしくなるようなバカップルの熱愛っぷりに足早に去ろうとする。

図鑑所有者でいうと、ルビーとサファイアが一番座りそうか?

自分で考えておきながら、それはねえか、と思い直す。

ルビーは座りたがっても、サファイアなら座るはずないだろうしな。

正面玄関にようやく到着し、残るは自動ドアだけだ。

一刻も早くリア充のための特設コーナー&バレンタインチョココーナーから
立ち去りたい俺はドアが開くのを見つめる。

さあ、俺のために早く開けっての!


「……あ」

そんなことしていたら、見つけてしまったのだ。

ガラスに映る、チョコを選ぶお前を。




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