企画

□予定調和は狂わない
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落ち着いた、秋を連想させる茶と橙の包装紙にくるまれたそれには、
オイラのには青色の、パールのには赤色のリボンが結ってあった。


「これお嬢さんが作ったのか……!?」

すげえ、と歓声をあげるパール。

お嬢様は気まずそうに、視線を斜め左下の明後日の方向に向けた。

少しずつ、破かないように包装紙をセロハンテープからはがそうと奮闘するパール。

現れたのは、小分けされた箱で。

中身は今日が何の日かを、雄弁に語っているようで。


「うめえ!やべえ超美味いぞダイヤ!お前も食べろよ!」

「ちょっと待ってパール……どうかしたの?お嬢様」

パクパクと食べ始めたパールをたしなめるように言うと、黙ったままのお嬢様に
パールも気づいたようで、動きを止めた。

一同、動きを目で追って。


「……私がこんなに上手に作れると思いますか?」

「え……?」

どういう意味なの、と問う自分の声が、お嬢様を責めるように聞こえる。


「それっ……買ってきた、ものなんです……!」

くやしそうに、吐き出すように言って。

お嬢様は振り返らずに、部屋から走り去ってしまった。



 予定調和は狂わない



「待って、お嬢様!!」

走り去るお嬢様を必死で追うけれど、なかなかお嬢様は足が早いようだ。

全然追い付けない……そんなオイラのすぐ脇を稲光のごとく何者かがすり抜けた。

金髪の、いつでもオイラの先を行ってしまう彼。


「パール、お願い!」

「任せとけっ!」

短い会話をして、ニヤっと笑ったかと思うと。

パールはぐん、とスピードをあげた。

オイラには追い付けないと言うかのごとく走って、走って。

ついにパールの背中も地平線に消えてしまった。


「……はあ、」

このまま走って追いかけ続けるのが道理なんだろうけど、オイラは足を止めてしまう。


オイラが追いかけていったところで、先にお嬢様を振り向かせるのは、きっとパールだろうから。


なんでかな、どうしてなんだろうな。


「……オイラも、パールみたいになれたら、自分の思ったように動けたかな」

オイラには無理だね、と影が呟いた。




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