企画

□予定調和は狂わない
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「お嬢さん、どこに行く気だよ」

息を切らして、近づいて。

立ち止まった私に声をかけたのは、やっぱり当然のようにパールでした。


「……どこに行ったって、パールには関係無いじゃありませんか」

思ったって仕方ない怒りを沸き上がらせながら、
わざわざ私を追って来てくれたパールに、八つ当たりをしました。

分かってましたよ、パールが来るだろうって。

でもこういう時くらいは、いつもの常識を覆してくれたって、いいじゃないですか。

あなたが先に来てくれたって――――、いいじゃ、ないですか。


「ごめんな」

私の顔を見て、パールは困ったような顔をして言いました。

謝らなければいけないのは私の方なのに。


「…………」

沈黙が重苦しく場に立っています。

パールも黙りこくっていて、私も何も言えませんでした。


「……ダイヤ、遅いな」

永遠にも刹那にも匹敵する間の後、パールはそんなことを呟きました。

まさしく、彼からしてみれば。

何気無い、一言だったのでしょう。


「ダイヤモンドは来ないと思いますよ」

彼はなんでかいつも、そういう風に身を引くから。

私は思わず、そう言ってしまいました。


「ダイヤモンドは私のことが、嫌いでしょうから」

「そんなわけ無いだろ、それは有り得ない!」

何故かきっぱりと断言するパール。

そんなに彼がしっかりと言い切れるのかは、私には分からなくて。


「あなたはいつも、どうして言いもしない……言えもしないことを、
 理解できるのですか?」

それはダイヤモンドもだけれど、私には分からない。

どうして他人が思うことを、いとも簡単に理解できるのだろう。

私が世間知らずなだけで、みなさんは普通、そうなのでしょうか。

私には、分かりません。


「はっきりと分かりきってるわけじゃない、俺だって、誰だってそんなのできない。
 でも、お嬢さんもよくしてるだろ?相手をよく見て、行動から推測する」

結局は推測論だな、と笑いますが、それは難しいことのように思えて。

私がよくしているだなんて、過大評価もほどほどにしてほしい。


「ダイヤはお嬢さんのことが大好きなんだよ、だからお嬢さんのために何かしたくて、
 でもお嬢さんは他人をあんまり頼らないから」

心配なんだよ。

心配だから、距離を図りかねるんだ。

自分のことは出来る限り自分でしたい。

それが心配をかけていることだとは、思わなくて。


「さっきだって、そうだろ?お嬢さんの様子に気付いて、追って。
 来ないのは、お嬢さんが傷ついただろうと、気をつかってるだけだ」

待ってるだろうよ、と手をさしだすパール。

矛盾しているような、接続しきれない説得でした。

だけれど、怒りが、行き場の無い思いが収まったのも事実で。


「……はい。帰りましょう」

これがケンカというものなのでしょうか。

ケンカというものはしたことがなかったですね、と妙に他人のことのように思いました。



 予定調和はわない

 (狂わないこそ、維持されるは心地いい関係図)













昨日寝オチしたせいで上げられなかったダイ嬢。

こんなでも……ダイ嬢、なんだぜ……!

「なかよシンオウ」とか言われるくらい仲のいいシンオウを、
仲悪くさせてみたかったんです。

テーマは「こんなバレンタイン嫌だ」!

チョコを食べるパールをダイヤがたしなめる、という異常事態を取り入れてみました。

意味不明だね!知ってる!

どこに謝ればいいのだろうか。
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