企画

□卒業式が被っても
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※現代風パロというか学パロというか、何だか微妙


3月中旬。

後少しで、私の人生が決まってしまいます。

カリカリカリ。

シャーペンが滑らかなカーブを描く。

この教科の、数学さえ終えられれば。

私の入試は、終わります。


「っ……!」

グラフを書き終え、応用問題へ。

時間がかかりそうなソレに焦ります。

ゆっくり……でも急いで、確実に。

数十分で未来が決まる。

大学生生活も、就職先も。


「止め!!」

チャイムと共に監督の先生の合図がありました。

ふう、と息を吐いて時計を確認します。


「終わり、ました……」

今ごろ2人も卒業式を終えたところでしょう。

重なってほしくなんてなかった。

誰に言ったら良かったのか分からない不満が、ぼんやりと浮かび上がりました。







「…………」

同じ大学を受けた知り合いは一人もいません。

一人でとぼとぼ歩きます。


「家に帰ったら……何を、しましょうか」

長かった受験。

それが終わったのです、何でもできるはずなのに。

(何も思い付かないのは、何故でしょうか)

カツカツ。

もう履くことも無いのだろうと思うと、響くローファーの靴音すら感慨深い気がします。


「とりあえず寝たいですか、ね」

こんな時間から寝るなんて、いかにも受験終了といった感じがするようで。

早く家に帰ろう。

地下鉄に乗り込み窓を見て、真っ暗な景色にため息を送り出しました。






「ただいま」

共働きの両親です、いないことは分かっていますが、くせなのでしょうか。

家に帰ると、必ず呟いてしまいます。

(シャワー浴びて、着替えて……寝てしまいましょう)

気づかないうちに私は疲れていたようです。

ふわあ、と漏れ出たあくびを噛み殺さずにすれば、
そういえばあくびをするのも久しぶりだなと思いました。



「学校に寄った方が、よかったのでしょうか?」

一体どうすれば、よかったんでしょうね。

分かりません、だって。

卒業式と入試が被るなんて、思いもしていませんでしたから。




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