企画

□卒業式が被っても
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シャワーを浴び終えてパジャマを着ます。

パジャマといっても、ジャージですが。

時刻は16時。

ニュースを聞き流しながら髪をふきます。


『……全国的に卒業式シーズンとなりました』

ぴく。

何のニュースかは、よく見ていなかったので分かりませんでしたが。

卒業式、という単語に肩が震えました。

出たかったに決まっています。

いくら時間がかかるからといって、面倒だからといって。

必ず出られるものだと―――確証もないのに思っていました。

今ごろ何をしているのでしょうか。

また同じことを考えそうになって、タオルを強めに握りました。

(仕方ない、ことですから)

自分は踏ん切りをつけるのが、こんなにも下手くそだったのですね。

生まれて初めて、知りました。

ピンポン。

そんな折りに、来訪を告げるチャイム音が鳴りました。

こんな時間に誰でしょうか、宅配かもしれません。

珍しくインターホンのカメラで来訪者を確認せずに、はい、と返事をしながらドアを開けました。


「……え?」

「お嬢様、受験お疲れ様〜」

そこには、ダイヤモンドとパールがいました。


「どうして、ここに」

「どうしてって……あ、先生から卒業証書とか色々!預かってるぜ」

「ああ……ありがとうございます」

そうでしたね、書類がありました。

すっかり卒業式で物を渡されることを忘れていました。


「あのね、お嬢様」

「はい」

「緊張したでしょう?ゆっくり休んでね」

労る、優しい言葉に。

今は、ホッとして。

嬉しく、思います。

終わったんだ。

実感の無かったソレに、実感が沸いてきました。

終わったんだ。終わったんだ。


「ありがとうございます」

今まで、ずっと。

一緒にいてくれて、世間の荒波から守ってくれて。

進む道は三者三様、みんな違いますが。


「大学に入っても、また会いましょうね」

卒業したって、あなたたちとの仲は、変わらないはずだから。

変えたく、ないから。


「当たり前だろ、お嬢さん。というか、もう大学に入った気でいるのか!?」

「自信あるんだね〜」

えっ、そういうつもりではなくて!その!

焦った私に、冗談だよと笑いかけてくれる2人は。

まさしく高校で手にすることができた、大切な友人です。



 卒業式がっても

 (出られなくとも、ずっと一緒に)














朝から何を書いているのだろうか、私は。

変な話だ……何したかったんだ私。

オチが見当たらないね!CP要素がゼロだね!

お嬢様は理系の私立大学に行きそう、というのが私の偏見ですが、どうなんでしょうかね。
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