企画

□思いが通ずるまでの道のり
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※現代風パロ
※年齢操作のため注意



初めて彼に会ったのは、春風薫る3月のことだった。


「サファイア、お前と同い年なんだってさ」

お父さんの友達の子として紹介された男の子。

活動的でやんちゃな彼と仲良くなるのに、時間はかからなかった。





数日過ごしているうちに、ジョウト地方という彼の住む場所では
サクラやモミジが美しく色づくと知った。

ぜひ訪れてみたい!

私もジョウトに行きたいです、と言ったら、その時は僕が案内するね、と言ってくれた。

彼が負けず嫌いで、そして体を動かすことが大好きなことも知った。

彼は私と全然違って、汚れることもお構いなしに遊ぶ。

そんな彼に惹かれたのは、自然な流れだった。






ある日のことだ。

いつものように幼稚園から帰ってきた私に、
すでに泥んこの彼が、輝かくような笑顔で森からやってくる。

彼の腕には、小さな猫がいた。


「けが、してるみたいなんだ。手当てしてあげよう!」

「うん!」

ひどい怪我を負っていた。

縄張り争いにでも負けたのだろう、他の猫に引っ掛かれた痕や、噛みつかれた痕がある。

お父さんに頼んで治療してもらったら、すぐに回復した。


「けどなあ、ここに住む限りはまた縄張り争いに巻き込まれるだろうな」

「そんな……」

「仕方ないことだって、あるんだよ」

頭を撫でてくれたお父さんの手が、まだ大きかった。






それからしばらくして。

幼稚園から帰ってきた私は、彼がトイレに行っているうちにあの猫を探した。

優しい彼は、猫が傷つくのが嫌で飼いたい、と私が言って反対されたのを聞いていたのだろう。

それとなく、猫から私を遠ざけてくれていた。

でも、諦めきれなくて。

傷つくのを頬っておくなんて、そんなの嫌!


「あ、いたっ……!」

だがそれは幸か不幸か、縄張り争いの真っ只中。


「やめて!!」

飛び出していったって、猫同士のケンカを止める力などない。

引っ掛かれて、噛まれて。


「やめて……やめてよ……!!」

それでも猫を守りたかった。


「サファイア!」

そんな辛いときに、彼が駆けつけてきてくれた。





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