企画

□散る桜を愛でる
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天気のいいある日のこと。

気持ちのいい太陽の光を浴びながら、くああ、と大きなあくびを1つ。

こんな気持ちのいい天気なんだから、室内にいるのなんかもったいないよな。

お花見とかいいかもなあ、季節だし。

そんないい加減な気持ちで公園のベンチに腰かけて桜を見る。

クリスとシルバーと、それから誰を呼ぼうか。


「って、呼ぶ以前にクリスは忙しいかもな……」

それならば、と思い付いたならすぐさま行動!

ポケギアをポケットをまさぐって取りだした。







時刻は午後8時を回ったところだ。

昼過ぎに「夜桜見ようぜ!」と誘われてゴールドの家に向かうと。


「あらシルバー、こんな夜更けにどこ行くの?」

春らしいパステルカラーのワンピースを着た姉さんに遭遇した。


「姉さん!?どうかしたの?」

「シルバーの顔を見にきただけよ、最近どうかなーって」

にこっと笑いながら、でシルバーはどこに行くの?と再度尋ねられた。


「ゴールドが夜桜見よう、って。姉さんもどう?クリスもいるし」

「あら楽しそうね!でも、今回は止めておくわ。邪魔しちゃ悪いもの」

「邪魔だなんて、そんな……!」

「ふふふ、実はね、ヤナギに、会いに行こうと思ってるのよ」

「!」

姉さんの顔は穏やかで、憎しみや悲しみといった感情は見受けられない。

事件から何年も経っているが、姉さんだってヤナギを完全に許したわけではないだろう。


「俺も行く」

「ダメよシルバーは。私だけで行くわ」

あっさりと制止されてしまい、たじろく。

急に姉さんは、どうしたのだろうか。


「あら、勘違いしないで?」

俺の視線に気づいたのか、姉さんは片手をひらひら振りながら話す。


「シルバーはヤナギを許した……だから、私も向き合って何とかしなきゃ、と思ったのよ」

それでも、と目を伏せてそっと腰につけたモンスターボールに触る姉さん。


「それでもみんなを万全の状態で連れていくなんて……私って弱いわよね」

「そんなことない」

自らを嘲笑うかのように笑顔を見せる姉さんに、慌てて声をかけた。

姉さんが弱いなんて、俺には全然思えない。


「姉さんは……強いよ。俺も姉さんみたいに、なりたい」

「そうかしら……?」

何か言いたそうに口を開くも、姉さんは言葉にはしなかった。

春の夜空に、姉さんの吐息がかかる。


「ありがとね、シルバー。本当にあんたは私の大切な弟だわ」

じゃ、引き留めてごめんね。

明るく行って、小走りに去っていってしまう。

何でも抱え込まないで。

今度グリーンさんに報告しようと心の中に刻みつつ、ゴールドの元に急いだ。

ここに居座り続けた方が、姉さんに悪いような気がしたから。




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