企画

□私をほうっておいて
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イエローには知り合いが多い。

そのほとんどが俺とも知り合いだったりするんだけど、まあそれは置いといて。

その知り合いの多くは話が長くて面白いのだ、俺となんかとは比べ物にならないくらい。

だからきっと、そんな知り合いに捕まって長話をしているのだとは思うのだけれど。


「…………遅い」

帰ってくるのが、あまりにも遅いんじゃないか、イエロー?

もう日は暮れかけていて、夕闇色の空にはヤミカラスが何羽か飛んでいる。

すぐ戻るからゆっくりしていてくださいと、自分を椅子に座らせて笑った彼女。

ああ、そんな優しい彼女の言葉に甘えずに一緒に付いていけば、こんなに心配なんてしなかっただろうに。

買い物くらいすぐ終わるだろうと思っていたけれど、そもそもどこに行ったのだろう。

行き先も聞いていなかったことに気づいて、ポケギアをかけて直接聞くしかなさそうだけど
……何だか寂しくなった。

俺って、考えてみればメンタル弱いしヘタレだし。
自分をイエローが好きだなんて、勘違いもはなはだしかったのかもしれない。


「はあ……ジム、行ったら、グリーンいるかな」

何となく人恋しくなって、帰ってくる気配のないイエローの家を、そっと出た。

こんなに大好きなイエローなのに、今は何故か顔を合わせたくなかった。



***



「グリーン」

「…………レッドか。久しぶりだな」

久しぶり、といっても2日前に会ったばかりなのだが、そう言うグリーンにホッとする。

自分との再会を、待ち望んでいてくれた気がして。


「どうしたんだ?そんな泣きそうな顔で」

「……泣きそうな顔なんかしてるか、俺」

「だから聞いたんだが。どうしたんだ?」

優しく聞いてくれるグリーンが、とてもありがたい。

旅をしていたころはそりゃあまあ、色々あったけれど―――今ではグリーンは一番の俺の理解者といえよう。


「イエローが今、何をしているか分からなくて。俺なんかが彼女を待つ資格もないから。
 何だか寂しくなって、俺、どうしたらいいのか分からなくて」

言っていて、視界がにじんで驚いた。

あ、俺って本当に泣きそうな顔をしていたんだな。

あふれだしそうな雫を、こぼれだす前に服の袖口に吸わせた。


「…………俺にはレッドに自信がないことが不思議で仕方ないんだが」

俺とグリーンの間に置かれたペットボトルのうち、グリーンは彼に近いほうを取って、一口飲み下す。

それは意外な言葉で、俺は促すこともせず聞き入った。
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