企画

□私をほうっておいて
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「だってそうだろ、頂点にして原点で最強、チャンピオンも伊達じゃない折り紙つきの実力者。
 自分の名を知らない者はトレーナーの中にはいないほど。十分すぎる、誇らしい経歴だと思うが」

「そういうもの、なのか……?」

はは、乾いた笑い声がのどから絞り出される。

何を続けるわけでも無いようで、黙ってしまうグリーンの表情は、複雑だ。


「少なくとも俺の、得られなかった経歴だ」

「そうだけど……」

「そんなヤキモチばかり妬かずに、もっとポジティブにしてろよ」

「ヤキモ――――チ?」

言い刺された言は、なるぼどストンと分かりやすく的を射ているようだ。

ヤキモチ。

自分はずっと、ただヤキモチ妬いてただけなんだ。

イエローが誰かと話したり、笑ったり、することが。

たまらなく嫌なことだと思うのが、ヤキモチ以外の何だという?


「俺、……今までどうしてだか全然、これがヤキモチだって気づかなかった」

「そんなものだろ、ヤキモチだと分かって何か変わるわけでもないがな」

「……そうだな」

理解したからといって、何かが変わるわけでもない。

じゃあ俺は結局どうすきべきなんだ?


「イエローに会いたくはないのか?」

「……会いたい、会いたいよ。でも、こんな俺がそんな風にうだうだ考えたまま、会っていいのかって」

「…………だから」

はあ、と1つ。

グリーンは大きなためいきを盛大に吐き捨てた。


「こんな俺だなんて、言うな。そんなお前に憧れてる奴は俺を含め、たくさんいるんだから」

「グリーンが?」

照れた様子もなく普通に言ったグリーンを、俺は見返すことしかできない。

憧れの存在に、俺が。


「ああ。だからお前はもっと自分に自信を持て」

俺に向けられたグリーンの表情は、何だか久々に優しい顔をしているようで。

ああ、嬉しいなと純粋に思った。


「…………ありがとな、グリーン」

「気をつけて帰れよ」

恥ずかしさに背を向けて言えば、いつものように声をかけられた。

外はもうすっかり暗くなっていて、いつのまに時間が経過したのやら。


「本当に、ありがとな」

イエローの家めがけて走る。

道中口にした小さな言葉は、聞こえるはずもないけれど。

嬉しい気持ちが戻ってきて、何だか少し笑ってしまった。
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