創作

□新品の消しゴム
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俺様の辞書に不可能なんて文字は無い。


できないことなど無い!


やる前からあきらめてどうする!


そんなムサくて暑苦しい説教とは、俺様は無縁だ。


なんたって俺様に、不可能なんてないんだから。







新品の消しゴム








「その辞書は不良品だよ。私が捨ててきてあげるから、3秒以内に寄こしなさい。


 あれ?出せないの、出さないの、消しゴムさん?速く出してみなさいよ。


 私は心優しいから、きみの持っている欠陥品を捨ててこようと、申し出ているんだよ?


 さあ速く出してみなさい」




そんなことを言ってきたのは、ムカつくことに俺様よりも背が高い鉛筆だ。


今に見ていろよ、お前なんてどうせ俺様と同じくらいになったら、

ゴミ箱にぽい、だからな。


俺様のキュートな小ささとお前の小ささは、格が違うんだよ、

格が!!




「出せだと?鉛筆、お前誰に向かってそんな乱暴な口きいてんだよ?」


「消しゴムさんに決まってるじゃんかよ。
あなたこそ失礼だよね、

 私に向かってなんて口きいてんの?」


見下ろされているせいで、絵面的には俺様が悪いみたいだが、違う。


俺様の辞書には『自分が悪い』という言葉も無い。


そんなことをいったらまた


「それはおかしいよ消しゴムさん、そんなの普通の辞書にも載っていないよ?


 それはただの消しゴムさんの“認識”だよ」


とか鉛筆に言われるだろうから何も言わないが。





「相変わらず仲がいいね、消しゴムさんと鉛筆さん」



「はぁっ!?」



ふざけんな、といおうとして詰まる。


相手はなんたって“ペンケース”。



俺の居場所を消すことができる恐ろしい奴だ。


「ペンケース、それはおかしいぜ?俺様の偉大なる言葉にいちいちつっかかってくる、


 鉛筆と俺様の、ど・こ・が、仲よくみえるんだ?」


「ええ?超仲よさそうじゃん君たち。お似合いだよ、ベストカップル?」



あははっ、と無邪気そうに笑うペンケース。



恐ろしい奴だ。



「ペンケースさんからかわないでくださいよ。


 私は“曲がりたくない”だけです」
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