創作

□新品の消しゴム
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いきなり言い出す鉛筆。


「私の片想い中の方は、三角定規さんなんですよ?


 それを知っていて、そんなことを言うなんてひどいですよ!」




え、鉛筆、三角定規のヤローのどこがいいんだ?


ただ角々のヤローだぜ?



「とにかく!私と消しゴムさんはべ、ベストカップルなんかじゃ、ないんですから!


 からかわないでください!私と消しゴムさんはただの―――」


「ただの?」



ペンケースも聞き返すからたちが悪い。


でも確かに、俺様と鉛筆の関係とはなんだろう。



恋仲なんてのはありえないにしても、友達……でもないし。



兄妹なわけないし、親戚というわけでもないし。








「ただの、ケンカ相手です!」



「ケンカ相手ってっ!!」


ぶふっ、とペンケースは吹いた。




でもさすがの俺様もげんなりだ。



なんだよ、ケンカ相手って。





「そんな相手いらねーよ」


ふん、と胸をそりながら言う。



「俺様は世界のすべてを消し去ることができるんだぜ?


 穢れなき未使用の俺様が、どうしておまえなんかとケンカしなきゃいけないんだよ」


つっかかってくるのは、そっちだろう?




「この世界のすべてを消し去るの?」



ペンケースはそっちにつっこんできた。







「ああ、俺様が消し去ってやるよ」



「すべて消えてしまったら、消しゴムは寂しくないの?」



寂しい?


高貴な俺様には無縁な言葉だ。





「あのね、消しゴム。まだあなた“何も消したこと”がないじゃない。



 さっきと同じ言葉が……何か消した後に言えるとは、思えないけど」



「何を言うんだ、言えるに決まっているだろう?




 ―――なんたって俺様に、不可能なんてないんだからな」



厨二みたい、とペンケースは笑った。




誰がそんな病んだ奴に成り下がるか。




俺様はただ、自分の意志を貫くのみ。






新品の消しゴム






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