創作

□楽観的なタイヤ
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寒空の公園で、一人の少年がベンチにどかり、と座り込んだ。

「宿題終わんねー……っ!」


必死の少年はランドセルを机のかわりに膝の上にのせ、
プリントの問題を解きはじめる。


「おはよー。あれっマサキ、まだ宿題やってなかったのか?」


と、そこに表れた厚着の少年は、泣きそうな少年、マサキに話しかけた。

「うっせー!黙れ、ケヤキ!」


プリントにくしゃ、と軽くシワを作ってしまいながらも
マサキはケヤキに反発する。


「はーん、“割合”かよ。あ、ここ間違ってるし」


「ええっ!?」


もう間に合わないよ、と泣き言を言いつつもペンケースから
消しゴムを取り出して消し、解き直す。


「その消しゴム……ちっさ!どんだけ使ったんだよ」


「聞いて驚け、2週間」


ドヤ顔のマサキに、ケヤキは冷たくいい放つ。

「いーから、宿題やれよ」


ぶー、と文句を言いながらも真剣な顔つきで問題に取りかかる。


「……マサキ?」

「何だよ、ちょっと黙ってろ、あと少しだから!」


「時計、公園のって……10分、遅かったよな?」



顔を見合わせる2人。

そして仲良く声をそろえて。


「「遅刻だーっ!?」」


走り出す小学生を、近隣住民のおば様方が笑顔で見送る。



びゅおおお、と無情にも冷たく吹く風。




公園のベンチに、置き忘れられたであろう、小さな人工物があった。



……そう、それこそがまさに元・俺様。


今は“新品ではない”、“使われた”―――消しゴム。



消しゴムだった。
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