創作

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「わっ本当だ!リボン、ほどいていい!?」


「いいよ。……あれ、メッセージカードがある」


テンションが最高潮に達しているのか、声高なトウコをなだめて、
チェレンは箱のすぐそばに置かれたメッセージカードを手に取った。


「アララギ博士らしいね、みんなで仲良く分けろってさ」


「そうだね、ケンカはよくないもんね!」


よく分からないポイントを反復して、うんうんとうなずくベル。

チェレンもチェレンで軽く受け流していた。

いつものことだから。

リボンを丁寧に取るのに奮闘していた様子のトウコだったが、無事に取れたようだ。

箱をいち早く開けている様子に、やっぱり子供っぽいと思う。

大人びたように振る舞うことも増えたけれど、何たってトウコは僕の妹だし。

そういえば最近は、僕が兄かトウコが姉かでケンカしたんだっけ。

結局お母さんの『トウヤが先に生まれた』発言で終わったけれど。


「ポケモンをボールから出そうよ!出して、どの子を選ぶか考えよう?」


「そうだね!じゃあこの2つを私が出すから、ベルはこの2つをお願い」


「分かった、じゃあいくよー!」


元気な女子勢がボールからポケモンを出す。

と、その時になって気がついた。

最初のポケモンは3体。

対して、旅に出ることになった僕らは4人。

それは誰しも、違うポケモンを持つわけではない証明で。


「あれ?ツタージャが2匹いるよう?」


「ベル……」


首をかしげる彼女に、理由を伝えようとした。

彼女だって頭ではわかっているはずだけど。

急には、対応しきれ、ないから。


「じゃあ私とチェレンはツタージャね!」


明るい声が遮った。

早くもツタージャを抱き抱え、楽しそうに笑うのは、双子の妹であるはずのトウコ。

―――痛い。

僕のじゃなくて、きっとトウコの心が。

さっきチェレンとコソコソ話していたのは、このことだろう。

何故そんなにも、大人になろうとするのだろうか。

トウコだってチェレンだって、ダブりなんて嫌なはずだろうに。


「トウコ、チェレン……いいの?」


不安そうに居心地悪そうに、ベルが尋ねた。

嫌だよ、だけど何とかしなきゃならないなら、私が何とかするから大丈夫。

トウコがそんなようなことを、考えている気がした。


「いいよ、僕とトウコでお揃いだ。2人は2人で選びなよ」


「う、うん」


チェレンの言葉に後押しされたのか、ベルがさっきトウヤはミジュマルがいいって言ったよね、と言った。

私もポカブがよかったから、それでいい?

そんな言を聞きながら、妹の心中を察しようとする。


「じゃあこれで、決まりね」


図鑑は男の子用と女の子用で元から2つずつ入ってるから、これでいいわよね。


「最初のポケモンももらったことだし、バトル、しない?」


無邪気そうに笑う彼女の表情からは、彼女が何を考えているかは、分からなかった。












(気持ちを圧し殺してでも、大切なみんなとの関係を守りたいの)




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